それゆえ、有害であるとされる物質について、許容限度を定めて規制しているのが現実であり、たばこ煙をその例外とする論理的・科学的根拠は存在しないのではないか。たばこ煙中には200種類以上の有害物質が含まれ、発がん性物質は50種類以上にのぼるといわれており、その代表例として取り上げられるものにニコチン、タール、一酸化炭素があるが、これらはたばこ煙固有のものではない。特にタールと一酸化炭素は環境中のさまざまなところに存在し、環境基準などによって規制されている。

 たばこから出る有害物質は一切許容されないが、同一物質でも出どころが異なれば一定の範囲で受け入れられるという主張は、およそ論理的でも科学的でもない。炭火で焼いた焼き鳥や焼き肉は、おそらく一酸化炭素まみれであろう。実際にかつて、冷凍スモークマグロを輸入しようとしたところ、一酸化素汚染を理由に輸入差し止めになり、最高裁まで争われた事件(最高裁平成16年4月26日判決)があったほどだ。
(iStock)
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 人の健康を守るために法令によって規制しなければならない有害物質は、規制が健康保全を目的とするものである限り、その出どころを問わず、人体に対する影響という観点で、同じ手法・同じ基準で規制されるべきであろう。合理的根拠なしに別基準が定められれば、行政法上の平等原則に反する。

 さて、本稿で主に論じることが求められたのは「家庭内喫煙」の規制問題である。前置きが若干長くなってしまったが、筆者の基本的考え方は、規制の対象とされるべき受動喫煙とは、人の疾病原因となることについてエビデンス(証拠)のある受動喫煙に限られるというものである。確かに、たばこ煙をごくわずかでも浴びることは不愉快ではあるが、「不愉快」を法規制の根拠とする妥当性はあるのだろうか。健康被害を生じるからこそ規制の必要が認められるのではないか。

 次に、本稿の主題である家庭内喫煙規制について検討しよう。その検討の大前提として、成長過程にある子供の健康保障の重要性は明白であり、過保護にならない範囲で、子供は受動喫煙に限らず、あらゆる健康上の危険からできる限り保護されなければならないということを確認しておきたい。そしてこのことは、家庭の内外を問わず、同一の要請である。