都民ファーストの会がホームページ上でインターネットを通じて行った意見公募(8月30日~9月8日)では、条例の実効性を高めるために、むしろ罰則を設けるべきだという激励やお叱りの意見も多数頂きましたが、この条例案は罰則を設けておりません。条例上の罰則と、先にも触れた刑法の傷害罪・暴行罪とは別論です。

 他党の都議会議員から、啓発目的・訓示だけの条例ならば条例制定は不要であるといった旨の発言もありました。しかし、この意見は正しくありません。

 第1に、罰則のない努力義務であっても、この条例によって、子供に受動喫煙させることは避けるべきだという法的な規範が定立されることになります。

 こうした法的根拠によって、行政機関も、また私人(医療関係者、学校関係者、保育関係者、各種業界関係者、家庭内外の当事者に近い人などを想定)も、より自信を持って啓発活動を行いやすくなると考えられます。

 第2に、行政において、啓発や実態調査のための予算がより確保されやすくなると考えられます。東京都は、これまで職場や飲食店などの受動喫煙対策に、予算を用いて啓発や調査などを実施してきました。しかし、特に子供の受動喫煙に焦点をあてた取り組みは、区市レベルで独自に行っているところはありますが、東京都としては行っていませんでした。この条例の成立によって、しっかりと啓発が進むことを期待します。

 実際、2002年制定、2003年施行の健康増進法も、学校・病院・官公庁・飲食店などの施設管理者を対象とした罰則のない努力義務規定ですが、受動喫煙防止の法的根拠及び啓発としての意義がありました。同法は、14年間経過して、現在、罰則の導入が検討されていますが、子供の受動喫煙防止の条例も、まずは啓発条例として早々にスタートすることが肝要と考えます。
(iStock)
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 この条例案が、親の監護権や喫煙権、プライバシー権の侵害であるなどという誤った主張も見受けられますので、これについても反論しておきます。

 まずそもそも「喫煙権」というものが認められるかは、疑問です。最高裁昭和45年9月16日判決で「喫煙の自由は、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない」と判示されており、最高裁調査官の解説も踏まえれば、喫煙の自由は、「権利」とは断定されておらず、仮に権利としても制限に服しやすいものにすぎない、と解されています。

 次に、プライバシー権については、憲法上に明文の規定がありませんが、憲法13条「幸福追求権」に基づき、肯定されると解釈されています。

 その上で、憲法が保障する自由や権利は、「これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」とされ(憲法第12条)、「公共の福祉に反しない限り」において認められるものです(同第13条)。

 親の監護権、プライバシー権、喫煙の自由は、いずれも、常に無制限・無制約に認められるのではなく、「公共の福祉」による制約を受けます。