【ラスベガス乱射】 犯人はテロリストなのか

『BBC』

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2017年10月04日 18:57 公開

少なくとも58人が死亡し、527人が負傷した米ラスベガス乱射事件の容疑者について、情報が少しずつ明らかになるにつれて、インターネットではなぜスティーブン・パドック容疑者が「テロリスト」と呼ばれていないかについて、議論が繰り広げられている。

64歳で白人のパドック容疑者は1日夜、マンダレイ・ベイ・ホテル32階のスイートルームの窓から、屋外音楽祭の会場に向けて10分前後にわたり乱射を続けた。ラスベガス警察と主要マスコミは、容疑者を「一匹狼」、「おじいさん」、「ギャンブラー」、「元会計士」などと形容しているが、「テロリスト」とは呼んでいない。

警官隊が突入すると自殺していたという容疑者の動機は、まだ分かっていない。国際テロ組織とのつながりや、精神疾患は確認されていない。

しかしソーシャルメディアでは大勢が、もしパドック容疑者がイスラム教徒だったなら、証拠などなくてもイスラム過激主義とつながっているはずだという思い込みから、ただちに「テロリスト」と呼ばれたに違いないと指摘している。

著名人もテレビ出演者も学識者もこぞって、今回は何が違うのかと話し合っている。

ネバダ州法は「テロ行為」を、「多数の一般市民に甚大な身体的危害を加える、もしくは死亡させることを意図して暴力を使用する行為」と規定している。

米連邦法は、「国内テロ」の要件を3つ挙げ、「連邦法か州法に違反し、人命に危害を加え」、市民や政府を威圧もしくは強要し、主に米国内で起きる活動のことだと定めている。

連邦捜査局(FBI)も、「政治的もしくは社会的な目的の推進のため、政府や市民やその一部を、威圧もしくは強要する」意図をテロ行為の要件にしている。

大勢に危害を加えるだけでなく、政府に何らかの行動を強要する、あるいは特定の思想を推し進めようとするという要素があるかどうかが、「テロ」と認定するための鍵となるようだ。

ソーシャルメディアでは大勢が、ネバダ州法の関連部分の画像を共有し、ラスベガス市警のジョーセフ・ロンバルド保安官がパドック容疑者について記者会見で語った内容を疑問視した。保安官は2日未明、容疑者について「信条体系についてまだ分かっていない。現時点では、単独犯で、一匹狼的な犯人だったと考えている」と述べた。

これについて「@clairevenom」さんは、「『一匹狼』と読んだ瞬間、銃撃犯の人種が分かった」とツイートした。

その@clairevenomさんのツイートに、ジュリアン・レンガウアーさんは「自分も同じことを思った。もっとよく分かるよう、ネットでこの一覧表を見つけた」と返信した。

レンガウアーさんが投稿した画像は、肌の色を並べたものの思われる。左上の薄い色の下には「発砲犯」とあり、右に「銃撃犯」、「犯罪者」、「一匹狼」と並んでいる。下の段で肌の色が濃くなるにつれて、「過激派」、「武装勢力」、「狂信者」、「テロリスト」、「売人」、「フーディー」(パーカーのフードをかぶっている若者のこと。2012年2月にフロリダ州で、フードをかぶって歩いていた黒人青年トレイボン・マーティンさんが、白人男性に射殺された)、「ギャング構成員」、「ギャング」と言葉が並んでいる。

ツイッターでは1日の事件以来、「一匹狼」という単語が20万回以上、投稿された。大勢の利用者が、容疑者が白人か有色人種かで使われる表現が明らかに違うようだが、それはなぜかと議論するなか、「テロ攻撃」という言葉も17万回以上、投稿された。

フェイスブックでも議論が広がっている。インドネシアのムルサルさんは、「(容疑者は)国際テロリストじゃないって? 顔がアラブ風じゃないからか?」と書いた。

ムスリム系米国人のマフムード・エルアワディさんは、事件に悲しんでいると書いた上で、イスラム過激主義者の攻撃の後に自分の家族が経験するようなことを、今回の事件があっても白人は経験しないはずだと指摘した。

「乱射事件が起きるたびに、髪を覆っている妻は危険にさらされる。息子はモハメドという名前なので、学校で攻撃される。4歳の娘はアラビア語を話すので、つらい扱いを受ける。しかし、テロリストが白人でキリスト教徒だとなるといきなり、精神病の人がやったことだから何もかも大丈夫ということになる」

価値判断

BBCでは、「テロリスト」や「テロ」という言葉の使い方に、明確な基準を設けている。

BBC編集ガイドラインでは、「テロリストやテロ行為の構成要件について、幅広い合意は成立していない。テロという単語の使用にはしばしば、価値判断が伴う。そのため私たちは、人が『テロリスト』と言っている言葉を引用する際に表現を変更してはならないが、私たちとしては使用を避けるべきだ」と書いている。

さらにBBCの編集ガイドラインは、「だからといって、特定の行為の実態や恐ろしさを伝えることを回避してはならない。むしろ、自分の言葉の使い方によって、BBCの客観報道に対する評価にどう影響するかを検討すべきだ」と念押ししている。

ソーシャルメディアでは大多数の人が、パドック容疑者を「テロリスト」と呼ばない捜査当局やマスコミを批判している。しかし、大多数に異論を唱える人たちもいる。

ドニー・インバーソさんはツイッターで、「テロではない。テロは、恐怖によって人の政治信条や信仰を変えさせようとするものだ。これは乱射事件だった」と書いた。

M・G・ミッチェルさんは「政治的な動機の証拠を見つけていないなら、スティーブン・パドックは大量殺人犯だ。テロリストの定義にマッチしない」とツイートした。

プレストンさんは、「動機が分かるまでテロかどうか判断できない。乱射事件とテロは同義語じゃない」とツイートした。

(英語記事 Las Vegas shootings: Is the gunman a terrorist?

By UGC and Social News Team, additional reporting by BBC Reality Check