結論、小池さんは「総無責任選挙」で最後の希望を失った

『山田順』

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山田順(ジャーナリスト)

 これまでの選挙では、「後出しジャンケン」が有利ということが半ば定説化してきた。したがって、衆院選出馬は「100%ない」と言っている小池百合子東京都知事が「変節」する可能性は十分に残っていると考えてきたが、5日の前原誠司民進党代表との会談でも出馬を改めて否定してしまった。
民進党の前原誠司代表との会談後、囲み取材に応じる希望の党代表の小池百合子東京都知事=5日、東京都(佐藤徳昭撮影)
 しかし、民進党を丸のみすると思われていた小池「希望の党」が、結局、民進党候補に「踏み絵」を踏ませ、前原誠司・破壊合流組と細野豪志・旧合流組vs枝野幸男「立憲民主党」結党組に分裂した時点で、勝負はあったのではないかと思う。

 もちろん、まだまだ情勢はめまぐるしく変わる可能性があるが、それをかんがみても、結局は安倍晋三・自民党および公明党の現政権与党組が有利である。
 
 しかし、本稿は今回の総選挙を占い、その結果を予想しようとは努めるが、以下、述べることに自信はない。だいたい、私は昨年、米大統領選で「ユーアー・ファイアード男」トランプ大統領の当選をないと断言して大恥をかいている。よって、選挙予想などする資格がないので、以下は外すことを前提として読んでいただきたい。

 では、現時点での構図をまず、整理しておこう。

 本当に単純化してしまえば、今回の総選挙は、「自民・公明」vs「希望・維新」vs「立憲民主・共産・社民」の3極が争う構図になった。こうなると、現与党の安倍政権に対する批判票が分裂するので、常識的に考えれば「自民・公明」が有利である。いくら森友・加計学園問題がくすぶり続けても、この下馬評は変わらないだろう。
 
 「二都物語」は成立しても、「三都物語」は成立しない。実際、「グリーン大好き」小池知事が「都知事を道半ばで投げ出すのか」という批判を恐れて、態度を保留している現状では、この状況に変化はない。

 いつの時代も、有権者は単純な図式、つまり二者択一を求めている。3択は苦手だ。小池「希望の党」代表も出馬せず、結局は民進党に踏み絵を踏ませた時点で、「安倍」vs「小池」の図式は崩れてしまった。このことは、今回の選挙がいかに大義のない、安倍自民党の「森友・加計疑惑」逃れだとしても現野党勢力には不利だ。
結論、「総無責任選挙」だ

 「影の仕掛け人」であるブラックハットに白マフラーの麻生太郎副総理は、小池・前原連合に一瞬たじろいだといわれるが、民進分裂に「高笑い」が止まらないという。安倍首相もほっとしたに違いない。「森友・加計疑惑」はすっ飛び、北朝鮮のミサイルの援護射撃と敵失が重なったからだ。
解散後、街頭演説に飛び回る安倍首相=3日午後、栃木県鹿沼市
 このような状況を見て、自由党の小沢一郎共同代表は、やはり最善の選択である無所属で立候補する意向を表明した。自由党はメンバー3人が「希望の党」から出馬する一方、自らは無所属で出馬し、自由党の公認候補は擁立しないことを明らかにした。さらに小沢氏は、出馬しない小池知事を「きちんと、国民の前に自ら立って訴えるというのが自然だ」と批判した。

 「後出しジャンケン」が有利だというのは、これまでの選挙で半ば定説化してきた。しかし、小池「希望の党」代表は、都知事という地位に満足していないのは誰もが知っている。ならば、もし後出しジャンケンをしても、もはやサプライズは起こらない。この点を、細川護熙元首相が突いた。

「首相を目指すのであれば、保守やリベラルにこだわらず、器量の大きい人でいてもらいたい」「(安倍政権を倒す)倒幕が始まるのかと思っていたら、応仁(おうにん)の乱みたいにぐちゃぐちゃになってきた。政権交代までいかなくとも、せめて自民党を大敗させて、安倍晋三首相の党総裁3選阻止まではいってもらわないと」(10月2日「毎日新聞」インタビュー)

 こうしてやっと、今回の総選挙の意味がわかった。それで、こうネーミングするかしかないという結論に至った。小ざかしい、お利口さんばかりが争う「総無責任選挙」だ。

 まず、解散した首相も自民党も無責任だ。北朝鮮のミサイルが日本列島上空を飛び越えている状況で解散をするのだから、「大義なし」「(森友・加計)疑惑隠しだ」と批判されても仕方ない。それを承知で「勝てる」とした麻生名参謀の計略が、いまのところ敵失ではまっている。
小池百合子のラストチャンス

 さすがと思わせるのが、「若武者」小泉進次郎自民党筆頭副幹事長だ。練馬区・豊島園駅前の街頭演説で、衆院選を「責任対無責任の戦い」と訴え、小池知事を批判した。「小池さんは選挙に出ても出なくても、無責任になるジレンマに陥った」と指摘したのだ。

 希望の党は3日になって、第1次公認候補として、小選挙区191人、比例代表単独1人の計192人を発表したが、小池知事本人は出馬をまたも否定した。それ以前に、参謀なのかファンなのかよくわからない若狭勝氏がこう言ったことは、いまや致命傷になっている。

「(小池さんは)今回確実に政権交代できる見通しがあるなら、国政に出ることもありえる」「調整中の(候補者擁立などの)話を踏まえ、『次の次で確実に交代できる議席数に達する』という思いでいるとすれば、今回の衆院選に小池代表が出なくてもかまわない」

 党首が出馬しない選挙というものがあり得るのだろうか。残念至極だが、ここで出なかったらその後の彼女に都知事としての求心力が残されているかどうか、はなはだ疑問だ。小泉進次郎氏も菅義偉(よしひで)官房長官も、出馬を「アドバイス」しているではないか。特に、菅長官は3日の記者会見で、こう「逆エール」を送っている。

「国のことを思うのであれば堂々と出馬宣言し、真正面から政策論争することが、政治の透明性からもわかりやすい」
自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長=1日、東京都(小川真由美撮影)
 残念だが、彼女は年をとることがいかに残酷か知らないのではないか。あれほど知にたけたヒラリー・クリントン元国務長官すら、やっと米大統領候補の指名を受けたときは、68歳になっていた。もちろん、破ったのは70歳と2歳年上のトランプ氏だったが、女性にとって年を取ることは残酷だ。

 なぜ、同じように知にたけた小池知事が立候補しないのだろうか。フランスを救った「オルレアンの乙女」ジャンヌ・ダルクは17歳の乙女だった。当時の平均寿命からすれば、立派な成人女性だが、常に先頭に立って戦い、後出しジャンケンなどしなかった。小池氏は東京五輪のときは68歳になる。今回が最後のチャンスではないのか。

 国会議員でなければ首相になれないのだから、チャンスはこれ1回きりだ。

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