「総理になれないなら出馬しない」小池劇場はこうして大コケした

『小笠原誠治』

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小笠原誠治(コラムニスト)
 結局、小池百合子東京都知事は「不出馬」。政界の混乱、ここに極まれり。まさにそのような言葉がふさわしい政界の混乱ぶりです。

 まず、この混乱は、安倍晋三総理の大義なき解散決定からスタートしたと言っていいでしょう。なぜこの時期、安倍政権が解散を選んだかといえば、今なら与党が勝つチャンスが大きいと踏んだからです。

 森友・加計疑惑の関心が少しずつ薄らいでいく中、北朝鮮によるミサイル発射などの挑発行為が続き、内閣支持率が幾分回復しているかにも見えたことと、それに小池氏の新党設立も間に合わないであろうという見方が影響していたと思われます。
 
 しかし、その安倍総理の予想は少し甘かった。なぜならば、小池氏がいきなり新党・希望の党を立ち上げたからです。しかも、その新党に対して前原誠司民進党代表が合流を決断し、一気に新党ムードを高めたからです。

JR氏家駅前で行われた街頭演説で、気勢を上げる
安倍晋三首相=3日、栃木県(福島範和撮影) 
 ただし、その新党への合流という動きも、小池氏が民進党の全員を受け入れる気持ちはさらさらないと発言したことでさらなる波乱を巻き起こしました。小池氏から公認を拒否された民進党の議員たちは、自分たちの身の振り方を決断する必要があり、立憲民主党を誕生させることになってしまったからです。

 いずれにしても今、都知事選、都議選に続いて、3度目の小池劇場の上演となっているのです。小池氏は、衆議院選に出馬するのか、と。小池氏の総理を目指す野望が今回実現されるのか、と。ただ、前原代表を希望の党にすり寄せる作戦は成功したものの、いわゆる「リベラル派切り」を決定したことによって風の向きが変わってきています。

 何よりもテレビ映りとイメージを大切にする小池氏。今までは「悪者」を仕立てあげ、自分はそれに立ち向かう「正義の味方」を演じていたわけですが、今回は民進党のリベラル派切りを断行したことによって自分が何やら悪者、いや悪者と言っては言い過ぎかもしれませんが、権力者の如く国民の目に映りはじめているからです。
 
 判官びいきが日本人の常。右派か左派かという違いはあるにしても、自分の信念にどれだけ忠実であるか、何のために政治家を目指すのかということに有権者は敏感に反応するものであり、弱い者には味方したい、と。
政界の渡り鳥と呼ばれた小池氏

 いや、そんなことはないと評する向きもあるでしょうが、しかし、有権者は見るべきことは見ているのです。今回、小池氏は何のために新党「希望の党」を立ち上げたのか。そして、枝野幸男氏は何のために新党「立憲民主党」を立ち上げたのか、と。

 小池氏の新党立ち上げが、安倍政権と外交や安全保障などに関して考え方が大きく異なるということによるものであれば、このタイミングで安倍政権を倒す動きに出たことも理解できます。

 しかし、外交や安全保障のみならず右翼的な性格まで安倍総理とはうり二つ。それに、都議会自民党とは闘う姿勢を見せていた小池氏も、安倍総理とは良好な関係を維持する風を装っていたではありませんか。胸に東京五輪のバッジをつけてあげたり、あるいは「銀座の恋の物語」は私の十八番だから一緒にデュエットしたいと言ったり…。

 何だったのでしょうね、あれは。小池氏の性格をよく承知していた人々は、いかにも小池氏らしいと感じていたと思われます。そして、今回の動きも十分予想されたことだ、と。

 よく言えば、機を見るに敏、悪く言えば風見鶏。「政界渡り鳥」と言われながらも政治の世界で名を挙げることに邁進(まいしん)してきただけなのです。つまり、小池氏の新党立ち上げに大義などないのです。今なら選挙に勝てると思って衆議院を解散した安倍総理と、今なら新党ブームの風に乗って総理になれるかもしれないと考えた小池氏。

 その一方で、やむにやまれず新党の立ち上げを余儀なくされた枝野氏。党名はどうであれ、新党を立ち上げ、志を同じくする者たちとこれまでどおり自分たちの理想を実現するために立ち向かうしかないのです。
中野駅前で立憲民主党の街頭演説を行う枝野幸男代表=4日、東京都(納冨康撮影
 もちろん、立憲民主党がリベラル派の集団であれば、当然のことながら右寄りの有権者には敬遠されるかもしれませんが、しかし、自分たちの思想に忠実である面は理解されるでしょう。つまり、純粋さにおいては小池氏よりも枝野氏の方がはるかにまさる、と。

 ただし、リベラル派にもいろいろな人がいることは指摘しておかなければなりません。全員が純粋というわけでもないでしょう。というのも、菅直人元総理などは、小池氏の希望の党に民進党が合流するとのニュースが流れたときに、小池氏は「日本のメルケル」になってほしいとエールを送ったほどなのですから。
小池総理になってしたいこと?

 その一方で、民進党の逢坂誠二氏などは、立憲民主党設立が決定される前から、自分は無所属で出馬すると宣言していました。なんという爽やかさ。選挙は水物で実際に勝つかどうかは分かりませんが、自分の信念に忠実であることは十分証明されたと言っていいでしょう。

 枝野氏は、希望の党から立憲民主党へ移行したいという候補者がいたら移行を拒まないと言っています。いち早く希望の党へ移り、議員であり続けることを優先していた者たちは、今複雑な思いでいることでしょう。

 風向きが変わり、小池人気に陰りが出だしているのではないか、と。それに、肝心の連合が希望の党を支持することはしないことを決め、小池氏の思惑どおりに事が運ばなくなってきているからです。

 いずれにしても、仮に小池氏の希望でなく野望がかなって将来、総理の座に就くことができたとして彼女は何をやりたいのでしょうか。それが私には分かりません。

 彼女は、過去、環境大臣や防衛大臣を務めていますが、どんな実績があると言うのでしょうか。環境大臣の時にはクールビズを推進させたことくらいしか記憶にありません。環境大臣でありながら水俣を訪れようとは少しもしなかったとも言われています。
都議会本会議に臨む小池百合子都知事=5日午後、都庁(宮川浩和撮影)
 全国津々浦々にある電柱を地中化することをかねてから提唱していることは知られていますが、彼女はその莫大(ばくだい)な財源をどうやって捻出するかについては一言も言っていません。仮にそのような事業を優先させるとしたら、それは彼女の言うワイズ・スペンディング(税金の有効活用)に該当するのでしょうか。
 
 築地市場の豊洲移転問題に関する彼女の発言も一貫性があるとは思われません。もともと豊洲移転は仕方のないものだと認識しながらも、取りあえずは慎重な姿勢を見せ、それによって人気を高めようと考えただけなのではないでしょうか。

 小池氏は、自らの衆院選出馬に関してしつこく聞かれ、これまで「ない。最初から言っている」「日本の国政は改革のスピード感があまりに遅い。国会議員の一人になっても意味がない」と言っていましたが、それって「総理になる可能性があるのなら出馬しますけど…」と言っているのと同じですよね。


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