補足しておくと、堺市の借金がわずかばかり増えたのは、必ずしも悪いことだとは言えない。実質公債費比率を健全な水準に保ったまま収入に応じた借金をすることは、市民生活の向上につながるからである。例えば、自治体が30年にわたって使う橋を建設する際には、借金をせずに今の住民だけが全額を負担するのは不公平だし、一度に多額の支出となるので、30年ローンとした上で、その自治体に暮らした年数分だけ各住民がローンの支払いを負担するという方法をとることになる。このように考えると、自治体が収入に応じて借金を増やすのは、むしろ望ましいとも言えるのだ。何にせよ、大阪維新の会の宣伝とは裏腹に、現堺市政が財政を悪化させているのではないのである。

 大阪維新の会が今回の堺市長選挙で使ったグラフ目盛り操作は、今に始まったことではない。2015年の大阪市住民投票の際、大阪維新の会がタウンミーティング等で使用していたパネル(図3)もまた、極めてデタラメな目盛りであった。グラフの下部を切り、ごくわずかの借金減を極めて大げさに見せていたのである。これが、今も変わらぬ手口なのだ。そして、反維新勢力は、主義主張に違いこそあれ、こうした維新の政治手法に対して一斉に異議を唱えているのである。対立軸の根元にあるのは、主義主張の内容以前の問題なのだ。しかしながら、今回の堺市長選挙の結果を見る限り、もう維新の手口が見破られつつあるのかもしれない。少なくとも、大阪維新の会の新鮮さは失われ、多くの有権者が維新慣れしてきたことは事実であろう。
図3
図3 大阪維新の会がタウンミーティング等で使用していたパネル
 ただし、大阪維新の会が得票数を減らしているわけではない。今回の堺市長選挙の結果を前回と比べてみると、表1(次ページ)のようになる。前回に比べ、投票者数は3万7000人以上減ったにも拘らず、大阪維新の会の候補は前回から1268票しか減らしていないのだ。ほぼ同数の票を得たと言ってもよいだろう。そこには、橋下氏が引退した影響など全く見られない。この背後には、維新票の固定化があると推測される。つまり、雨が降ろうが槍(やり)が降ろうが維新に一票という固定支持層が生まれているのである。それは、決して少数派ではない。全く逆に、自民党や共産党や公明党の固定支持層よりも人数は多い。実際、今回の堺市長選挙にしても、もっと投票率が下がっていれば維新候補が当選していたであろう。こうなると、選挙における大阪維新の会の命運は、投票率にかかっていることになる。