2011年の大阪W選挙の頃は、無党派層や浮動票が大阪維新の会を支えていた。もちろん、橋下氏個人のタレント的な人気も大きかったに違いない。そして、当時は半ば詐欺的なイメージ戦略も新手の策略であった分だけ大いに通用した。だが、今は違う。少なくとも堺市長選挙を見る限り、橋下氏がいなくても票は減らなかった一方、従来と同じような手口を駆使しても票は増えなかったのだ。いわゆる無党派層は、ある意味で冷静であり、維新の手口を見破りつつあるのだろう。その一方で、大阪の場合、大阪維新の会が他のどの政党よりも多くの固定支持者をつかんでいるのである。
表1 堺市長選挙結果
表1 堺市長選挙結果
 この支持層にとって、大阪維新の会が流布する言辞の正確さや信憑性は何ら問題ではないのだろう。むしろ、大阪維新の会の煽動によって不満を強くかき立てられ、その矛先を求めているように見えてならない。だからこそ、橋下氏個人が政界を引退しようが維新に投票するのである。そこにあるのは、もはや橋下氏に対する支持ではなく、不満をぶつける標的を求める態度なのだ。となると、投票先が大阪維新の会である必然性もないことになる。別の勢力が巧妙に煽動すれば、そこに一気に流れる可能性さえあるのだ。

 このように考えるならば、固定化した維新支持層が今後どうなるのかは、まるで予測がつかないことになる。それでも、目前に迫った第48回衆議院議員総選挙において、大阪維新の会(日本維新の会)は、橋下氏がいなくとも堅調に大阪票を獲得するのではないだろうか。大阪府が起債許可団体に転落しているという事実を前にしても、維新支持の固定票は動きにくいのだ。希望の党は大阪に候補を立てないので、それに票を奪われる心配もない。大阪の現状では、安保が何であれ憲法が何であれ消費税が何であれ森友学園問題が何であれ、維新支持層は維新に投票するだろう。そうした中、もし他党が互いに票を奪い合う情勢になれば、固定票の多い維新が漁夫の利を得て小選挙区の多くを制することにならざるを得ない。

 以上のような次第であるからこそ、小池百合子氏の率いる希望の党は、大阪における維新との対決から逃げたのであろう。その結果、全国的に希望の党が話題を呼ぶ中で、大阪人は選択の埒外(らちがい)に置かれているのだ。そして、政令指定都市の首長選挙では自民党と共産党が反維新で一致団結している……。これらは、全国的に見ても非常にまれな状況であろう。

 橋下徹氏が私たち大阪人に残した負の遺産は、煽動政治を蔓延(まんえん)させたことだけではなく、大阪を政治的な特殊地帯にしてしまったことである。