八幡和郎(徳島文理大教授、評論家)

 小池百合子東京都知事を代表とする「希望の党」の迷走により、10月22日に投開票が行われる第48回総選挙は、公示日直前まで政党の枠組みが固まらなかった。さらに、希望の党が改選前議席数で野党第1党だったにもかかわらず、小池氏が都知事にとどまり出馬しなかったことにより、首班指名候補なしの選挙戦に突入してしまった。
党首討論会で政策目標を掲げる希望の党の小池代表=10月8日、東京・内幸町の日本記者クラブ
党首討論会で政策目標を掲げる希望の党の小池代表=10月8日、東京・内幸町の日本記者クラブ
 しかし、党首かそれに近い政治家が地方の首長で、総選挙に立候補しないというのは、初めてのことではない。

 2012年の総選挙では、日本未来の党が嘉田由紀子滋賀県知事を代表にして挑戦したが、9議席にとどまった。一方、大阪維新の会と日本創新党が合同して創立された日本維新の会は、太陽の党から合流した石原慎太郎代表、大阪市長の橋下徹代表代行、大阪府知事の松井一郎幹事長という体制で臨み54議席を獲得した。

 また、14年の総選挙では、石原グループが次世代の党として分離した後の日本維新の会と、江田憲司代表率いる結いの党が維新の党を結成して、橋下氏が共同代表の1人を務めて総選挙に臨み、41議席を獲得した。

 今回の総選挙では、もともと選挙は来年とみた小池氏が、希望の党という政党名を商標登録するなど着々と準備していたのだと思う。しかし、それを察した安倍晋三首相が、低迷していた支持率が回復したのを見て、一気にサプライズ解散に踏み切った。そこで、小池氏も民進党の前原誠司代表を口説いて、民進党との実質上の合流というウルトラCに出たものと察することができる。

 しかし、1年あまりで都知事を辞めてしまうと、いかにも投げ出したという印象を与えかねない。また、善戦はできても首相になれるほどの議席獲得が難しいという状況で、あわよくばという気持ちがありつつも、不出馬をいい続けることになり、それを翻すチャンスがないまま告示の日が来たということだろう。

 私は、小池氏のためにも希望の党は今回あまり急成長しない方がよいと思う。むしろ、安倍首相のもとでの憲法改正に賛成するということで、自民との大連立でも目指し、憲法改正を片付けて東京五輪の2020年の春にでも辞任し、あとは総選挙出馬を待てばよいと思う。それは、衆院選の候補者が政権を狙えるだけの数をそろえていなかったこともあるが、それ以上に、小池氏が経済政策で十分に準備ができていなかったことのほうが大きいと思う。

 希望の党が打ち出した「12のゼロ」という公約も、小池氏が都知事選で掲げた「7つのゼロ」に肉付けしただけだ。しかも、7つのゼロに「多摩格差のゼロ」があるなら、「12のゼロ」には「地方格差のゼロ」などあってもよさそうだが、そのようなものはなく「東京優先」の本音があらわだ。