むろん、野党共闘に期待する人々もいたと思う。同時に、目の前の事態に不安を感じる大多数の国民にとって、野党は弱々しく映ったに違いない。このままでは当選できないと感じた民進党議員の中から、持論を曲げてでも希望の党に移りたいという動きが生まれたのには、そういう背景もあろう。

 しかし、野党にその気があれば、安全保障問題でも政策協議できたはずだ。この間の野党共闘は、共産党が日米安保条約の廃棄と自衛隊の解消という独自の立場を持ち込まないと明確にしたことで、ようやく成り立っていたものだ。しかも、共産党はただ持ち込まないというだけではなく、新安保法制以前の条約や法律で安保や自衛隊を運用するとまで明言していたのである。

志位 私たちは、日米安保条約を廃棄するという大方針、それから自衛隊は、日米安保条約を廃棄した新しい日本が平和外交をやるなかで、国民合意で一歩一歩、解消に向かっての前進をはかろうという大方針は堅持していきたいと思っています。ただ、その方針を『国民連合政府』に求めるということはしない。これをしたら他の党と一致にならない。そういう点では方針を『凍結』する。

 ですから、『国民連合政府』の対応としては、安保条約にかかわる問題は『凍結』する。すなわち戦争法の廃止は前提にして、これまでの(戦争法成立前の)条約と法律の枠内で対応する。現状からの改悪はやらない。『廃棄』に向かっての措置もとらない。現状維持ということですね。これできちんと対応する。

 「戦争法廃止以前の条約と法律」と言えば、安倍政権以前の自民党政権時代の条約と法律ということである。そこには条約で言えば、日米地位協定もあるだろうし、「思いやり予算」の特別協定も含まれるということだ。法律といえば、自衛隊法はもちろん、日本防衛とは距離のある周辺事態法も含まれる。これらはすべて、共産党が野党として反対してきたものだ。それでも新安保法制を廃止するために、ここまで踏み切ったのである。この考え方で行けば、既に配備されているミサイル防衛システムの発動や改良にだって「賛成」を明言できたはずである。

 ところが、その共産党もメディアに尋ねられれば、ここまで踏み込むのに機関紙「しんぶん赤旗」の記事では、自衛隊について肯定的な報道をすることが一切ない。ミサイル防衛システムを改善するイージス・アショアについても、猛反対の記事ばかりが掲載される。つまり、総論では現状の枠内なら賛成と言いつつ、各論になると賛成できるものを提示できないのである。
街頭演説で支持を訴える共産党の志位和夫委員長=10月10日、東京・新宿
街頭演説で支持を訴える共産党の志位和夫委員長=2017年10月、東京・新宿
 そういう現状では、共産党から他の野党に防衛問題を提起することができなかったのは仕方がない。国民が信頼できる防衛政策を野党共闘が打ち出せなかった理由の一つはここにある。