2017年10月17日 12:06 公開

管轄権が争われていたイラク北部キルクーク市外で、クルド人戦闘員からいくつかの重要な施設を掌握した後、イラク政府軍が市の中心部に進軍した。

イラク軍の進軍を前に、大勢の人たちが市から避難した。

3週間前には、クルディスタン地域政府(KRG)が中央政府や周辺国などの反対を押し切り独立を問う住民投票を実施していた。

イラク軍は、「イスラム国」戦闘員の掃討後にクルド側が支配していた地域の管轄権を取り戻そうとしている。

先月25日の住民投票では、キルクークを含めクルド側が支配していた地域の住民の圧倒的多数がイラクからの分離独立を支持した。

キルクークはクルド人自治区外ではあるものの、同市に住むクルド人有権者は住民投票に参加することを許された。

イラクのハイダル・アバディ首相は住民投票を違憲だと非難。一方、クルディスタン地域政府は合法だと主張していた。

米当局者は「緊張を緩和するためイラクのあらゆる関係者と連携している」と述べた。ドナルド・トランプ米大統領は、米国が「どちらかの味方につくことはない」とし、「彼らが衝突しているというのはよくない」と述べた。

アバディ首相は16日の声明文で、キルクークでの今回の作戦は住民投票の実施で「分裂の危機にあった国の結束を守る」ために必要だったと述べた。

また「すべての市民に対し、市民の保護を第一とする厳しい命令に従事し、安全と秩序をもたらし、国の設備や施設を守る私たちの英雄的な軍に協力するよう呼びかけたい」と加えた。

16日、イラク軍は同軍の部隊がK1軍基地とババ・グルグル油田、それに国営石油関連企業の事務所を掌握したと述べた。

<クルド系メディア「ルダウ」は16日、キルクークのナジマルディン・カリム知事の執務室内に入ったイラク軍を撮影した写真をツイッターに投稿した>

イラク政府は、KRGの治安部隊ペシュメルガが「戦うことなく」撤退したとした。一方、キルクーク市の南では衝突があったと伝えられている。BBCのカメラマンが撮影した検問所付近の映像の中で銃声が聞こえている。

同日午後、両陣営の衝突が差し迫っていると恐れた大勢の人たちが町から避難するなか、イラク軍の車両がキルクーク市中心部に進軍していた。

ロイター通信によると、イラク軍は国旗とともに掲げられていたKRGの旗を撤去した。

アバディ首相は対立が続いている地域すべてで国旗を掲げるよう命じていた。

イラク軍が市の中心部まで速やかにたどり着いたことで、武装しているクルド側の主要2政党は、お互いに「裏切られた」と非難している。

与党クルディスタン民主党(KDP)のマスード・バルザニ大統領率いるペシュメルガ総司令部が「クルディスタンの人々に対する企て」に加担したとして、クルディスタン愛国同盟(PUK)を非難した。

PUKは撤退命令を出したことを否定し、自分たちの戦闘員からは何十人も死傷者が出たが、「キルクークの戦闘において、KDPペシュメルガはいまだに1人も殉死していない」と述べた。

一方、イラクでのクルド人自治区の独立を機に国内の少数派クルド人が同様の要求をすることを恐れるトルコは、イラク政府を称え、「イラク領土でのクルディスタン労働者党(PKK)の活動を終わらせるため、イラク政府とあらゆる形で協力する用意がある」と述べた。

PKKは1980年代以降、自治権を求めて戦うクルド系トルコ人の反政府武装勢力。トルコのほか、欧州連合(EU)や米国からもテロ組織とだみられている。

なぜキルクークが衝突の争点に?

キルクークは石油が豊富な地域で、クルド人と中央政府の双方が管轄権を主張している。住民の大半はクルド人とみられるが、県都には多くのアラブ系やトルコ系住民がいる。

2014年に過激派のいわゆる「イスラム国」(IS)がイラク北部を制圧し、イラク軍が退散した後、ペシュメルガがキルクークの大半を支配していた。

イラク国民議会は9月25日の住民投票後、キルクークやほかの係争地に進軍するようアバディ首相に求めたが、アバディ氏は先週、「共同政府」がこれらの地域を統治することを受け入れ、武力衝突は望まないと話していた。

アバディ政権は15日、KRGがキルクークにPKKのメンバーなどペシュメルガ以外の戦闘員を送り込んだと非難し、この動きが「宣戦布告」に当たると主張。KRGはこれを否定していた。

(英語記事 Iraqi forces enter Kirkuk as Kurds flee