2017年10月19日 13:14 公開

ヘレン・ブリッグス記者、BBCニュース

新たに発表された研究から、イヌはオオカミと比べて寛容で友好的な性分という通説に疑義が生じている。

協調性スキルを調べるテストで、オオカミの方が、家畜化された近い種のイヌよりも優れた成績を出したのだ。

科学者は、今回の発見が、イヌはオオカミが手懐けられて人間と暮らすようになったもの、という仮説に異議を唱えるものとなる、と話している。

これまでの検証結果では、家畜化のプロセスを経てイヌはオオカミより寛容な性質になったと示唆されていた。

「我々はいまだに、大柄で悪者のオオカミと、ソファに座っている抱っこしたくなるようなイヌ、という考えに固執している」とBBCに話すのは、オーストリアのウィーンにある獣医大学のサラ・マーシャル=ペシーニ博士だ。同博士は今回の調査を率いた。

「しかし極めて簡単に言うと、物語はそこまではっきりしていないということだと思う」

社会的な絆

オオカミは非常に社会的な動物だ。密接に結びついた家族集団で暮らし、共に子オオカミを育て、集団で狩りを行う。

このような行動は、現代のイヌには見られない。とはいうものの、お互いや人間に対してより寛容で友好的な個体がイヌとして家畜化された、という考えがある。

オオカミとイヌにとって協調性は生まれつきのものかをテストするため、科学者は古典的な行動実験を行なった。

綱引きテストとして知られるもので、トレーに乗った餌を得るために、2匹の動物が同時にロープを手繰り寄せる。

動物は、一緒にロープを引いた時だけ、ご褒美として生肉の塊を与えられる。

実験でイヌは、472回中わずか2回しか成功しなかった。一方でオオカミは、416回中100回成功させた。

マーシャル=ペシーニ博士は、オオカミがこの課題を「非常にうまくこなし」、チンパンジーと同水準の成績だったと述べた。

「(オオカミは)お互いに対し非常に協力的な上、強い社会的絆を構築する」とマーシャル・ペシーニ博士は言う。

イヌはロープを使った作業で、ほとんど全くと言っていいほど協力し合うことはなかった。これは、衝突を避けたいと考えたからという可能性がある。

実験は、オーストリアのウィーンにあるオオカミ科学センターで行われた。ここでは、オオカミとイヌが小さい頃から同じ環境で育てられている。

これにより、人間からの影響がない状態で、オオカミとイヌの自然な行動への洞察が可能となる。

パズルのピース

米ニューヨークにあるストーニーブルック大学のクリシュナ・ビーラマ准教授(今回の実験には関わっていない)によると、オオカミは家畜化された唯一の大型肉食動物だと話した。

「オオカミの社会的な行動が家畜化のプロセスの鍵となった可能性はある。そのため今回のような研究が、より多くのパズルのピースを合わせる手助けとなる」と説明している。

オオカミがいかにして手懐けられてイヌになったかの話は複雑で、激しい議論がなされている。

3万年ほど前、オオカミが食べ残しをあさろうと人間の集落の周りに移ってきた。

家畜化の長いプロセスでオオカミの行動や遺伝子が変わり始め、やがて私たちが今日知るイヌに進化した。

イヌとオオカミは、持ち合わせた本能や気質が異なるものの、外見的には類似している。

米国科学アカデミー紀要 に掲載された今回の研究は、家畜化の影響について分からない点がまだあることを示唆している。

(英語記事 'Big, bad wolf' image flawed - scientists