上久保誠人(立命館大政策科学部教授)

 リベラルではない政治家たちが、「リベラル」と名乗っている。小池百合子東京都知事が代表を務める新党、希望の党が、「事実上の解党」をして公認申請した民進党出身の候補者を、独自の基準で選別する「排除の論理」を持ち出した。その結果、公認を得られず路頭に迷った議員が立憲民主党を結成した。代表に就任した枝野幸男元官房長官は「リベラル新党、よくできたと期待をいただいている。リベラルによって日本が輝いていた時代の日本社会を取り戻す」と宣言した。

 改憲・安保法制への賛成という「踏み絵」を踏ませ、リベラルを排除した小池氏は「寛容さがない」と厳しい批判にさらされ、希望の党への支持が停滞している。一方、立憲民主党・社民党・共産党の「リベラル陣営」には勢いが出てきた。「踏み絵」を踏まずに護憲・安保法制反対を守る姿勢が「筋が通っている」と支持を集め始めているのだ。だが、彼らの行動は本当に筋が通ったものなのだろうか。

 そもそも、立憲民主党・社民党・共産党がリベラルと称していることに、疑問を感じている。彼らは、「憲法9条改正反対」「安保法制反対」という安全保障政策の方向性がリベラルだとされている。そして、リベラルと対抗するのが改憲・安保法制賛成の「保守」ということになる。だが、欧米の自由民主主義諸国で、安全保障政策の方向性で「保守」「リベラル」を分ける考え方は存在しない。

 欧米では、リベラルとは経済政策の方向性を説明する言葉の一つである。そして、リベラルは「経済の自由主義」を意味している。例えば、筆者がかつて留学していた英国でいえば、リベラルとはかつての自由党、現在の保守党左派、マーガレット・サッチャー元首相に代表される「自由主義」のグループのことで、経済政策の方向性は減税、規制緩和、行政改革である。ちなみに、保守党右派とは、伝統的な「保守主義」を指す。テリーザ・メイ首相、デービッド・キャメロン前首相らであり、欧州連合(EU)離脱の国民投票を行い、ハード・ブレグジット(強硬な離脱)も辞さずの姿勢を示している。
2017年10月、英マンチェスターの与党保守党大会で演説するメイ首相(AP=共同)
2017年10月、英マンチェスターの与党保守党大会で演説するメイ首相(AP=共同)
 また、トニー・ブレア、ゴードン・ブラウン両元首相に代表される「ニュー・レイバー」労働党右派もリベラルと呼ばれる。基本的に「サッチャリズム」を引き継ぎ、競争で起こる格差拡大に対して、補助金よりも教育政策で個人の能力向上で対応する、保守でも革新でもない「第3の道」を標榜(ひょうぼう)していた。これに対して、現在の労働党の主流であるジェレミー・コービン党首率いる左派は、鉄鋼、鉄道、石油、電力など主要産業の国有化を主張する「左翼」である。