川上和久(国際医療福祉大学教授)

 こんな衆院選になろうとは、9月25日に安倍晋三首相が衆議院の解散を表明した時点で誰が予想できたろうか。最初のサプライズは9月28日の解散日に起きた。

 あっと驚く前原誠司民進党代表による希望の党への合流表明。第一野党が、わずか1時間程度の議論でできたばかりの新党に合流するなど前代未聞だ。「安倍政権打倒」という一点での大同団結に、すわ政権交代の可能性も、と永田町に緊張が走った。

 しかし、その後の展開は「リベラル切り」ですったもんだする。単に安倍政権打倒だけのためにミソもクソも一緒くたにしたら、またぞろ理念もまったく違うリベラル系を抱え込んで、路線対立で行き詰まる。政策的には純化路線で、安保法制への賛成、憲法改正への賛成など、一定の政策のタガをはめなければ持つまい。これまでの民主党から民進党に至る経緯もつぶさに見てきた希望の党の小池百合子代表の脳裏には、このような思いが去来していたのだろう。

2017年10月10日、衆院選公示日に長崎入りし、
応援演説をする民進党の前原誠司代表(山田哲司撮影)
 思えば、丸ごと合流で安倍政権打倒に集中しようとする前原氏とは、最初から微妙な齟齬(そご)があった。

 希望の党が示す「政策協定書」の最初の条件に対して「文言が修正された」と強弁するが、あれだけプラカードまで掲げて大反対していた安保法制に賛成して「現下の厳しい国際情勢にかんがみ、現行の安全保障法制については、憲法にのっとり適切に運用する。その上で不断の見直しを行い、現実的な安全保障政策を支持する」と、「法案には反対したが、現実に法律ができたのだから、憲法にのっとり運用する」という理屈で何が悪いとばかり、多くの民進党のメンバーが希望の党にはせ参じた。

 一方、それをよしとせず、小池代表から「排除します、受け入れる気はさらさらない」とまで言われたリベラルグループは、枝野幸男氏を中心に立憲民主党を旗揚げした。さらに無所属での出馬を選択、あるいは余儀なくされた人たちもいる。民進党は「三分裂」の憂き目に遭った。どれがミソでどれがクソなのか、ここでは問うまい。

 10月10日に選挙の号砲が鳴ったが、新聞各社などの序盤世論調査に共通するのは「自公が300議席を伺う勢い」「希望の党は失速」「立憲民主党の健闘」だ。上記三つの傾向の原因を作ったのは、解散した安倍首相や、希望の党へのまるごと合流を袖にされた前原氏よりも、やはり小池氏だろう。小池氏は有権者の「五つの疑問や不安」に答えられず、有権者の不信を招いたからだ。