佐藤健志(作家、評論家)

 今回の総選挙では、「リベラル壊滅」が生じたとする見方が強い。壊滅論のポイントを整理すれば、次のようになろう。

 (1)民進党が希望の党への合流を決めたことで、リベラル系政党の連携、いわゆる「野党共闘」が打撃を受けた。
 (2)希望の党の公認を得るべく、多くの民進党出身者がみずからの姿勢を保守化させ、リベラルから転向した。
 (3)希望の党に合流せず、リベラルの姿勢を維持している者は、もはや少数派にすぎず、政権獲得をめざすどころか、改憲発議を阻止する勢力にもなりえない。
 (4)民進党が希望の党への合流を決めたのは、「今のままでは選挙を戦えない」という判断の産物であった。

 つまりリベラルは国民から愛想をつかされていたのであり、希望の党への合流をめぐる騒動によって、それが決定的に浮き彫りになったというわけなのだ。
会見する希望の党代表の小池百合子氏=2017年9月、東京都庁(飯田英男撮影)
会見する希望の党代表の小池百合子氏=2017年9月、東京都庁(飯田英男撮影)
 ここで言う「リベラル(派)」は、「往年の『革新(派)』ほど、左翼的な反政府・反体制志向が顕著ではないものの、ナショナリズムや積極的な安全保障政策の追求には否定的で、経済政策に関しても、平等志向に基づく弱者擁護の姿勢を強調したがる立場の者たち」と定義できる。
 希望の党代表である小池百合子東京都知事は、同党からの公認を申請した民進党候補について、平和安全法制や憲法改正を肯定するかどうかで選別を行った。しかもその際、「(選別は)リベラル派大量虐殺なのか?」と質問された小池氏は、これを打ち消すのではなく、次のように返答したと伝えられる。
 「排除致します。というか、絞らせていただくということです。それはやはり、安全保障や憲法観という根幹部分で一致していくことが政党の構成員として必要最低限のことではないかと思っています」
 くだんの選別、ないし排除によって、選挙の構図は大きく変わる。希望の党と民進党の合流が伝えられた当初は、「自民党VS希望の党」の構図も、「保守とリベラルの競合」としての側面を持っていた。民進党はもともとリベラル色が強く、希望の党はできたばかりの新党だからだ。

 しかるに希望の党が公認に関するリベラル排除を打ち出したとたん、この構図は「保守と保守の競合」に変貌した。ハフィントンポストの記事によると、民進党の前議員88人のうち、希望の党の公認を得た者は約60%。あとの40%のうち、リベラル系新党「立憲民主党」に参加した者はさらに約40%で、残りは無所属で出馬したという。

 上記の経緯を見るかぎり、リベラル壊滅論は相応の説得力を持つ。しかるに、注目すべきは、公認に関するリベラル排除を打ち出したとたん、希望の党のブームがいきなり失速したことである。
 同党の獲得議席については、一時は150を超えるとか、200をうかがうかもしれないとまで言われた。ところが現時点では、良くて公示前の57を多少上回る程度、下手をすれば割り込むと予想されている。