古谷経衡(文筆家)

 「自民党優勢」の報道が出ると、いざ投票日には反作用が働いて野党票が増える。よって「自民党優勢」の事前報道は自民党を「勝たせないため」の偏向報道だ―、という人がいるが、うそ。最近の新聞・テレビ各社の世論調査は精度が良すぎて、大体事前の情勢が当たってしまうのである。

 よって、投開票日のよる20時0秒にでる開票予測が、ほぼそのまま選挙結果とイコールになる。「事前に優勢(或いは劣勢)報道がでると、有権者が判官びいきで逆行動に走る」というは冷戦時代のお話。大平正芳や中曽根康弘時代の前提であって、現在では通用しない。

 私は何が言いたいのかといえば、良くも悪くも現在の選挙報道の精度が高く、信頼に足る、ということだ。冷戦時代の選挙予測が聴診器だとすれば、現在のそれはMRI(核磁気共鳴診断装置)である。そのぐらい精度が上がっている。

 だから、一昔前ならばあった「大番狂わせ」というのが、とんと無くなった。よほどの接戦区ならわからないが、大体読み通りになる。だから、つまらないと言えばつまらない。解散した時点で、おおよその結果は分かるのである。
解散表明のテレビ画面に見入る家電量販店の来店者ら=2017年9月、横浜市
解散表明のテレビ画面に見入る家電量販店の来店者ら=2017年9月、横浜市
 小池百合子が「希望の党」代表になった際(立憲民主が存在していない時分)、「反アベ」に血眼になった一部の週刊誌や予想屋が「自民単独過半数割れ、希望の党100議席に躍進」などと書いたが、大うそだ。

 安倍総理の解散決断の時点で、私は直感的に自民党単独で270前後、ミニマム(最小)でも260、マックスで280議席超すらありうる、とテレビやラジオで公言してきた。本稿執筆時点は投開票日の2日前であるが、この予想はいささかも変わらない。自公あわせて300議席の攻防であろう(―結局、議員定数の母数が10減っているので、自公は現有を維持し、大きく変化ない)。創価学会と組まない希望の党が、100議席に新調することなど、選挙の常識から言ってあり得ない。公明党は常時700万票前後を保有している、現代日本で唯一残された組織票だ。

 ここを味方にできなかった希望の党と小池に最初から勝利などありはしない。ガソリンを止められた戦車師団と同じで、学会に背を向けられたものは勝てない。現代日本政治の常識だ。逆に言えば先の都議会議員選挙で小池率いる「都F」(都民ファーストの会)が勝ったのは学会票が所以(ゆえん)である。小池の政治力のお陰ではない。ここを勘違いしている人が多い。

 アベ憎しのあまり、選挙予測の常道を忘れて「自民党単独過半数割れ」などとした予想屋は、22日の20時0秒を以て赤っ恥をかくに違いない。断っておくが私は安倍政権からカネを貰っているわけでも、安倍政権を100%信任しているわけでもない。自民党員でもなければ、元来の自民党支持者でもない。自民党や安倍総理に対しては、どちらかと言えば冷淡な方だ。

 単に、客観的な選挙の常道から言って、自公が勝つに決まっているという事実を述べただけだ。今次選挙に限ったことではないが、とりわけスポーツ紙などで煽情的な「自民壊滅」の報が出る。が、これらは統計的根拠に基づかない嘘なので信用しないように。

 CNNと朝日新聞調査の方が1000倍信用できる。そのぐらい、現代の世論調査は進化している(―ちなみに、新聞やテレビが実施する電話世論調査には携帯電話しかもっていない青年層は除外され、固定電話を持つ高齢者世帯からのみ意見を抽出している、というデマが未だに一部でまかり通っているが、現在の電話世論調査は無作為に発生させた”ケータイユーザー”にもきちんと調査を実施しているので、騙されてはいけない)。