いつもは柔和な筑波大学体育専門学群長、真田久の硬い表情が決意を示している。 「2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催国として、各国スポーツ界の次世代リーダーを養成する国際拠点を維持していく責任があります」

 7月26日、筑波大学は「つくば国際スポーツアカデミー(TIAS)」の創設を発表。併せて国際オリンピック委員会(IOC)が中心となって設立されたスポーツマネジメント大学院(AISTS)との連携協定に調印した。

 TIASは、簡単に言えば国際的なスポーツ指導者を養成する大学院。IOCやAISTSなどから講師を招き、スポーツ界で必要とされる知識を英語で授業し、修了者には国際スポーツ学修士の学位が与えられる。定員は20人で日本人は5人、残り15人は海外からの留学生。あくまでも「世界のスポーツ界を支える人材を日本で養成する」(真田)ことが目的だ。これは昨年9月、東京開催を決めたIOC総会で首相、安倍晋三が国際公約した「スポーツ・フォー・トゥモロー」に基づいている。

 「日本で学ぶのですから、日本文化に高い関心を有している者を応募条件にします」。真田はTIASアカデミー長に就任、プロジェクトを牽引(けんいん)する。教育の基本理念は、オリンピズムとともに嘉納治五郎の思想、「精力善用・自他共栄」「一世化育」に置く。このうち一世化育とは「一人の教えは百代、つまり永遠に続く」という意味である。

 柔道の創始者である嘉納は筑波大学の前身、東京高等師範学校校長を務めた教育者。1909年にアジアから初めてIOC委員に就任した日本オリンピックの父でもある。同じ教育者のオリンピック創始者、ピエール・ド・クーベルタンが唱えたオリンピズムに共鳴し生涯の友となるのだが、一方で武士道精神をオリンピック・ムーブメントを通して世界に普及させたいとの思いも抱いていた。

 嘉納治五郎研究家でもある真田が、理念をそこに求めたのは必然だろう。

 オリンピックというと、華やかな競技大会に目が行きがちだが、実はスポーツを通した人間教育に他ならない。その国際拠点の一つを日本に創り、教育を始める以上、2020年の後も、いや永遠に継続していかなければ意味がない。真田の固い覚悟は、日本に課せられた覚悟でもある。

敬称略(特別記者 佐野慎輔)