佐藤智(教育ライター)

 先の総選挙で自民党が勝利した。自民・公明両党は、幼児教育の無償化とともに私立高校の授業料無償化を実現したいと掲げ、注目が集まっている。消費税増税の文脈と一緒に語られることも多いため、「財源の確保はどうするのか」という問題に目が行きがちになってしまい、本質的な教育無償化の議論にまで至らないことも少なくない。

 そこで今回は、「高校の授業料無償化」がどんな意味を持つのかに焦点を当てて考えたい。
(iStock)
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 まずは、一時期騒がれていた高校無償化が、現在ではどのような制度になっているのか、少しおさらいをしてみよう。

 高校無償化は、2014年から「高等学校等就学支援金制度」という新制度となった。この制度は、「高校の授業料に充てるための就学支援金を支給することにより、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の実質的な機会均等に寄与することを目的」としている。

 現在は、国公私立問わず一定の収入額未満(市町村民税所得割額)が30万4200円(年収約910万円未満)の世帯の生徒に対して、授業料を支援している。具体的には、世帯収入590万~910万円未満の世帯には年11万8800円(月9900円分)とし、250万円未満世帯で私立高校に通う生徒にはその2・5倍(年29万7000円)を支援するなど、所得に応じて支給額を決定しているのだ。

 受給額の年額11万8800円は、公立高校の授業料全額分が免除されている金額だ。つまり、私立学校に通う生徒に対しても低所得世帯・中間所得世帯に対しては公立高校と同額のサポートがなされており、それを上回る分を家庭から支出することとなっている。

 私立学校の授業料には学校によって大きなひらきがある上に、施設費や制服費用、修学旅行の旅行積み立て費用なども高額なことが少なくない。また、これは私立学校、公立学校を問わないが、生徒が主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」型の授業の導入が進み、情報通信技術(ICT)関連の購入費用などプラスの負荷が家庭にかかることも増えている。

 高校進学率のさらなる上昇や、金銭面を理由とする高校中退者の減少がみられた点で、施策は一定の効果があったと考えられるものの、学校教育費の家庭負担が一切なくなったわけではないのだ。