2017年10月31日 13:35 公開

スティーブン・マッキントッシュ芸能担当記者

ケビン・スペイシー氏が同性愛者だと明らかにしたのがもし昨年のことだったら、反応はまったく違ったはずだ。しかし30日のカムアウトに、世間はまったく別の反応を示した。

まず初めに、これが昨年だったら、間違いなく歓迎されていただろう。同性愛者だと打ち明ければ出演映画の興行収入にマイナスに響くと大勢が考えている世界で、ハリウッドのトップ俳優がカムアウトしたのだから。

しかし人気テレビシリーズ「ハウス・オブ・カード」にも主演するスペイシー氏は、1986年に子役の男の子に性的な関係を持ちかけたと非難されて初めて、カムアウトすることを選んだ。

当時14歳だった米俳優アンソニー・ラップ氏は米バズフィードに対し、当時26歳のスペイシー氏から自宅のパーティーに招待され、ベッドに連れ込まれたと明らかにした。当時のスペイシー氏は酔っていたようだと話した。

スペイシー氏はツイッターし、謝罪した。さらに続けて「今回の出来事は、自分の人生の他のことにも向き合う励ましになった(中略)昔から色々な男性を愛してきたし、逢瀬も重ねてきた。今はゲイの男性として生活することを選ぶ」と書いた。

しかしそれ以降、スペイシー氏はこのタイミングを選んでカムアウトしたことを問題視され、批判されている。自分の性的指向を盾にして、疑惑による悪評をかわそうとしているという非難もある。

情報サイト「ゲイ・タイムズ」のジョシュ・リバーズ新編集長は、「ゲイだからといって許されることではない」と話す。

「どんな性的指向だろうと、誰かを性的に狙って捕食動物のように追い回すのは悪い行為だ」

「スペイシー氏は自分のセクシュアリティーについて、明らかにする時期を間違えた。まして、このようにとんでもない行為について非難されている状況なのに」

レズビアンやバイセクシャルの女性に向けた月刊誌「ディーバ」の発行者で、英LGBTアワードの共同創設者でもあるリンダ・ライリー氏は、スペイシー氏がこの時期にカムアウトしようと選んだことについて「残念だ」と話した。

「疑惑をかわそうとしていると感じた。これまで実に何度もカムアウトする機会があったのに、そうしなかったた。それは本人の選んだことだが、今回は謝罪に専念すべきだった。なので自分自身の話にずらしてしまうのは、要するに最低だ」

ライリー氏はさらに、「正直に言うと、今回のスペイシー氏の声明文そのものがとても計算高いものだと思う。やったことを認めようとしているけれど、自分がゲイだという部分でごまかそうとしている」と加えた。

一方で、LGBT(性的少数者)向けニュースサイト「ピンクニュース」のベンジャミン・コーエン最高経営責任者(CEO)は「ケビン・スペイシーは(疑惑を暴露された以上)カムアウトする以外、ほかにどうしようもなかったと思う」と指摘する。

「しかし当時たった14歳の子供に対し、不適切な行動をとったという非常に深刻な疑惑に回答すると同時に、カムアウトすることになったのは残念だ」

コーエン氏はさらに、「ニュース性のある話題が2つになった」と指摘する。「一つは『スター俳優のケビン・スペイシー氏が同性愛を告白した』というもの。そしてもう一つが『ケビン・スペイシー氏が1980年代の性的不品行を糾弾されている』というもの」。

「今回のスペイシー氏の対応で、この2つの問題が結びついているように見せかけてしまったのは残念だ」

スペイシー氏が謝罪声明を29日夜遅くに発表すると、ソーシャルメディアでもたちまち同様の反応が多く見られた。その反応はLGBT関係者だけに留まらなかった。

トランスジェンダーの活動家アシュリー・マリー・プレストン氏はツイッターで、「ケビン・スペイシーがゲイだろうと、興味はない。なぜ、性的指向と未成年に対する性的嫌がらせを一緒にするか、そちらの興味がある。話題をそらさないで」と投稿した。

英コメディアンでレズビアンのスー・パーキンス氏はツイッターで、「よくやったね、ケビン。自分の性的指向をずっと黙っていて、未成年への性的暴行疑惑とひとまとめにできるタイミングで初めて、明らかにしたなんて」と皮肉った。

映画評論家のリチャード・ローソン氏は、「自分がゲイの男性だと公表することと、自分が14歳少年を狙った人間だと公表することは同じじゃない。これを一緒にするのは、吐き気がする」とツイートした。

リバーズ氏は、「スペイシー氏が2つのことを一緒くたにしたことに(LGBT)コミュニティーが怒っているのは、当然だ。話題をそらすテクニックみたいだ」と述べた。

「同性愛と小児性愛には関係があると主張する人たちが、ただでさえいる。そんあものはないとみんな分かっているけど、彼の声明は、偏見の否定に何も役に立たない」

「同性愛恐怖症の人は、あらゆる口実を使って自分たちを正当化する。(スペイシー氏の謝罪は)同性愛恐怖症の人が私たちコミュニティーを攻撃する、お手軽な手がかりを与えたようなもの。偏見を助長する簡単な手がかりを与えたようなものだ」

他に大勢が、スペイシー氏がもっと早くにゲイだと公表しなかったことに落胆していると話した。

コーエン氏は、「特に今の『ハウス・オブ・カード』での大役を考えると、素晴らしい話になったと思う」と残念がった。

「米国の主流テレビ番組の出演者がカムアウトするという、興味深いチャンスで、とても前向きなことだったはずだ。けれどももちろん、そうはならなかった」

ライリー氏は、スペイシー氏がもっと早くカムアウトしていたら、「称賛されていただろう」と考えている。

「LGBTの俳優が、自分がゲイだと言えて、言っても別に大したことにならないのは、素晴らしいこと。毎日のようにどんどん大勢の人がカムアウトしている。だから、彼のキャリアにとっても大きなマイナスにはならなかったと思う。活躍しているLGBTの俳優はたくさんいるから」

それにもかかわらず、スペイシー氏は大勢から批判される羽目になってしまったとリバーズ氏は言う。

「私たちLGBTはコミュニティーとして、このような情報操作や話題をそらす行為を、これまでも敏感に感じとれるように訓練されてきた。なので絶対に我慢はできない」

ライリー氏はさらに、「実に大勢のLGBTの人が、カムアウトするためにとても多くのことを犠牲にしてきた。非常に勇気のいることだった。だから、カムアウトすることは勇気ある行動だと見られるべきで、話題をそらすための方便と思われてはならない」

(英語記事 Why are people angry about Kevin Spacey coming out?