上杉隆(メディアアナリスト)

 今回の総選挙において、当初勢いのあった希望の党の潮目になったのが「排除の論理」という言葉だ。「排除の論理」は強烈な「呪文」である。うまく使えば武器になるが、使い方を間違えると凶器に変わる。

民主党結成の呼びかけをする左から岡崎トミ子、鳩山由紀夫、菅直人、鳩山邦夫のかく衆議院議員=1996年9月、第一議員会館
民主党結成の呼びかけをする左から岡崎トミ子氏、鳩山由紀夫氏、菅直人氏、鳩山邦夫氏=1996年9月、第一議員会館 
 1996年、その「排除の論理」によって誕生したのが民主党(のち民進党)だ。新党立ち上げ直前、村山富市元首相、武村正義さきがけ代表の二人を斬るために行使したのがこの年流行語大賞にもなった「排除の論理」だ。

 発案者は鳩山邦夫副代表(新進党)。決定者は菅直人、鳩山由紀夫の共同代表(ともにさきがけ)、仙谷由人代表幹事と横路孝弘副代表(ともに社民党)で、実行者には枝野幸男氏、前原誠司氏、玄葉光一郎氏(以上さきがけ)、赤松広隆氏(社民党)、海江田万里氏(市民リーグ)がいた。

 「排除の論理」でスタートした民主党(民進党)が、その「呪文」によって、20年以上の歴史に自ら終止符を打つことになるとは、なんという歴史の皮肉であろう。

 21年前、自民党と新進党とは違う、リベラル独自路線を歩むべくスタートを切った民主党は、最初の総選挙で52議席(参院と合わせて57議席)を獲得し、政界の台風の目になった。

 それから21年、民主党の「創業者」のひとりで故人となった鳩山邦夫氏の創った「呪文」が再び政界に嵐をもたらした。

 「希望の党」の結党直前、ほとんど政権交代を手中に収めるかにみえた小池百合子代表には大きな不安があった。それは「リベラル」の偽看板を掲げた民進党の護憲左派が、大挙して新党に押し寄せるという悪夢だった。

 「憲法改正や安全保障政策だけは絶対に譲れない」

 自民党で防衛大臣まで務めた小池代表がそう公言するのは当然のことであった。新党にまさか民進党左派や護憲派がやってくるとは思わなかったが、政治の世界はなにがあるかわからないし、特に選挙直前はなおさらだ。

 実際、21年前の「排除の論理」の際の政治家たちの阿鼻(あび)叫喚を、鳩山邦夫秘書として目撃していた筆者は、小池氏の不安を十分理解できた。

 「最終的には『排除の論理』を行使すればいいじゃないですか」

 それほど深い意味はなかった。政策や方針を旗印に政党がまとまるのは当然のことだ。日本だけではない、世界中の政党が不断に「排除の論理」を行使して政治を行っている。

 21年前、鳩山氏が「呪文」を唱えたからこそ、その後の民主党は世紀をまたいで成長し、ついには政権を獲得できたのではないか――。筆者は、その率直な気持ちを小池氏の前で吐露し、旧知の細野豪志氏の前でも語った。

 実は、昨年の都知事選で小池氏と戦った後も、小池氏とは都政についての意見交換を続けたり、筆者の運営している報道番組『ニューズオプエド』等に出演してもらう中で交流を続けていた。そうした人間関係の中で、まさか自分の会話から、21年ぶりに「呪文」をよみがえらせることになろうとはいったい誰が想像しえたか。