碓井真史(新潟青陵大学大学院教授)

 私たちは真実を求める。だが、真実とはなんだろう。身だしなみも整えず、お世辞の一つも言わないことではないだろう。裸であることが真実ではない。私たちには伝えたいことがある。伝えたいことのために演出もする。それは真実を覆い隠す嘘ではない。

 人はみな、自分をプレゼンする。自分のプレゼンの仕方を心得ている人は人間関係がうまくいく。普通の人はもちろん、芸能人や、そして支持率の高い政治家はことにそうだ。彼らは自分自身を売るための企画をし、プロデュースしていく。自分の見せ方こそが、芸能人の人気につながり、政治家としての力になっていく。

 小池百合子東京都知事は、自分の見せ方を心得ている。元ニュースキャスターとして、見られること、聞かれることになれている。古い政治家とは全く異なり、ファッションも立ち居振る舞いも、言葉の選び方もタイミングも最適の選択をして、あの熱狂的な「小池ブーム」を作り出してきた。ほんの1年前、小池候補の演説を聴くために大通りを埋めつくす群衆が詰めかけていた。しかし、プレゼンで成功した人はプレゼンで失敗もする。
党首討論会に参加した希望の党の小池百合子代表(中央)。左は自民党の安倍晋三首相、右は日本共産党の志位和夫委員長=2017年10月8日、東京都千代田区の日本記者クラブ(宮崎瑞穂撮影)
党首討論会に参加した希望の党の小池百合子代表(中央)。左は自民党の安倍晋三首相、右は日本共産党の志位和夫委員長=2017年10月8日、東京都千代田区の日本記者クラブ(宮崎瑞穂撮影)
 自分の見せ方のことを、心理学では「セルフ・プレゼンテーション(自己呈示)」と呼んでいる。人はみな、自分のイメージを演出し、自分の印象をコントロールしようとしている。これがセルフ・プレゼンテーション、自己呈示である。

 子供から大人までみんながしていることだが、人気商売の人たちには専門のプロデューサーがついたり、スタイリストがついたり、芸能事務所や政党がついて、よりよく見せて売り出すための支援をしている。米大統領にも専門のスタッフがついてアドバイスし、専門家が演説の文章を考える。

 セルフ・プレゼンテーションには、積極的にある印象を与えようとする積極的な「主張的自己呈示」と、逆に悪い印象を避けようとする「防衛的自己呈示」がある。政治家の中にも、攻撃に強い人や登り調子の時には強い人でも、攻められたとき、調子がくだり坂になったときには弱い人もいる。主張的自己呈示は得意でも、防衛的自己呈示の苦手な人はいるだろう。