容疑者の供述によれば、最初の被害者女性とは殺害前にも会話をしているようである。彼は、この女性のことをさらに求めたのかもしれない。2人になったときに交際を迫ったか、あるいは最初から乱暴目的で2人になったのかもしれない。だが女性に抵抗され、そこで彼は女性を殺害したのかもしれない。乱暴し、殺害し、遺体を切断する。彼はこの行為に、自分でも戸惑うほど興奮したのかもしれない。彼の心の底に潜んでいた快楽殺人者の心にスイッチが入ってしまったのかもしれない。

 彼はこの異常な欲望を抑えることができなかったのだろうか。猛烈な勢いで次々と女性を誘い出し、殺害と遺体の切断を続けたのだろう。海外で見られるような典型的な連続殺人犯はある意味自分自身を受け入れている。自分の異常な欲望を理解し、行為をじっくり楽しみ、自分自身とその行為を正当化する。今回の容疑者は、そこまで心が進む前に数多くの殺害を実行してしまったのだろう。そこには、女性を誘い出し2人になりやすいネット上の自殺志願者の集まりの存在が影響しただろう。彼は典型的な連続快楽殺人者ではなく、未熟な連続快楽殺人と呼べるだろう。

 また彼は犯行前、周囲に自殺をほのめかすような発言をしている。典型的な連続殺人犯は、長く殺人を楽しもうと思うが、彼は自分の人生は残り少ないと感じる中で、一気に多数の殺人を犯したのかもしれない。

 大胆で巧みな連続殺人、異様な遺体処置の仕方。ここまでは連続殺人者らしい凶悪さを感じる。その一方で、次第に増えていく遺体の一部と強まる異臭に戸惑ってもいたのだろう。おもちゃで遊ぶのは楽しいが、夢中になって遊んでいるうちに、自分では片付けられないほど散らかしてしまった子供のように。

 送検される容疑者は、両手で顔をしっかりと覆っていた。マスコミのカメラを避けるように容疑者が顔を隠すのはよく見る風景だ。だが、彼が両手で顔を押さえつけているのは、単に顔を隠しているのではなく、苦悩している姿のように私には思えた。夢中になって殺人を続けていたこの2カ月。彼は自分でも自分を見失っていたのだろう。逮捕され、初めて彼は自分の心の深い闇をのぞき始めたのかもしれない。
2017年10月1日、送検のため、警視庁高尾署を出る白石隆浩容疑者
2017年10月1日、送検のため、警視庁高尾署を出る白石隆浩容疑者
 だがそれは、私たちが望むような被害者とご遺族に対する反省の思いではない。彼が悔恨の涙を流し謝罪するまでの道のりは長い。彼は、どんな人物なのか。彼の心の中で何が起き、現実の犯罪はどう実行されたのか。被害者は多く、彼の心の闇は深い。真実を解明する長い旅は、まだ始まったばかりだ。