安倍晋三首相(自民党総裁)の憲法に関するインタビュー詳報は次の通り。

 ──かつてなく憲法改正の機運が高まっている

 「憲法改正賛成の人も増えてきた。一方、(まず目標に据えた改正発議要件を定めた)96条改正については慎重な人も増えていることを、われわれは注意深く考えていかなければならない。議論をしっかりと深め、正しく意図が伝わることが大切だろう」

 ──96条を先行させる意図、目的とは

 「憲法を国民の手に取り戻す。現行憲法自体、国民の手によってつくられたものではない。明治憲法は(君主が定める)欽定憲法だから、いまだかつて国民は自分たちの手で憲法をつくる経験をしていない。憲法は今、(改正発議には衆参両院の3分の2の賛成が必要という96条によって)永田町に閉じ込められている。その憲法を、鍵を開けて取り戻す。それこそが96条の改正だ」

 「国民の見識を信じ、(国民投票で)2分の1の国民が賛成するものは変えていく。同時に国民にも、憲法改正に関わっていくことに責任が発生する。改正することで初めて、憲法を自分自身のものとして国民に感じてもらえ、国民の手に取り戻せる」

憲法をテーマに産経新聞のインタビューに答える安倍晋三首相
=平成25年4月25日、首相官邸
 ──現行憲法はもともと「日本製」ではない

 「憲法を戦後、新しい時代を切り開くために自分たちでつくったというのは幻想だ。昭和21年に連合国軍総司令部(GHQ)の憲法も国際法も全く素人の人たちが、たった8日間でつくり上げた代物だ」

 ──野党には、96条の3分の2要件を2分の1にしたら危険だとの声がある

 「(国会で発議しても)どのみち国民投票で国民の2分の1の賛成が必要だ。(危険だというのは)それは事実上、国民に投票させないために言っているに等しい。国民はそうした国会議員に対して、もっと怒らなければならない」

 ──仮に夏の参院選後、衆参で改憲勢力が3分の2に達したとしたら、96条改正のタイムスケジュールは

 「まずは(第1次安倍内閣で成立させた)国民投票法について、宿題が残っている。成人年齢の18歳への引き下げと同時に、他の選挙権、民法上の権利義務との整合性を整理する必要がある。国民投票を行う際の公務員の政治的行為規制もあるし、国民投票の対象をどういうものにしていくかも宿題だ。これをまず整理する必要がある。(衆参の)憲法審査会でこの議論をしっかりやった上で発議をしていく」

 ──安倍政権が絶好調のうちに急いで進めようという思いはないか

 「それは全然ない」

 ──各種世論調査で96条改正への賛否が割れているのは、その先に何をやるか分からないからでは

 「そこについては議論していく必要がある。私はもちろん、前文、9条を変えていくべきだと思うが、政治は現実の問題だから、少し柔軟に考えていく必要がある。国民的な議論の盛り上がりもあるし、国民の関心の高さと支持による」

 ──憲法改正の必要性は時代の移り変わり、国際情勢とも連関している

 「日本を取り巻く安全保障環境は随分変わった。かつて冷戦時代は憲法の要請通り、実際にわが国の安全を事実上、米国に委ねていて、外交も基本的に米国の後についていくということだった。現在、冷戦構造が崩壊した中で、わが国は独自の防衛力を保持する必要性に迫られ、同時に国際貢献を果たし、日米同盟を維持する上でも役割が要求されている。それに対応できるかということがある」

 「そもそも憲法がつくられたときは、国際連合がものすごく機能するとみんな思っていた。(前文の)『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し』というのは国連を意識し、『国連がちゃんと機能するからそこに任せろ』ということだったが、実際は全く機能していない。憲法の前提条件は、実はもうあっという間に崩れていた」

 ──実際に96条を改正する際の枠組みの想定は

 「憲法改正については、もう(各議員が自党の決定、方針に縛られず自由に賛否を投じる)クロスボーティングでいい」

 ──政府の現行憲法解釈が認めていない集団的自衛権の行使について、年末の「防衛計画の大綱」決定までに見直し方針を示すか

 「示していければいいと思う。有識者会議『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』で深く議論してもらっている」

(阿比留瑠比)