陸続きではない日本に来る難民はそれほど多くないだろうが、北朝鮮の人口は2千数百万であり、拉致被害者はもちろん、在日朝鮮人の帰還(北送)運動でかつて北朝鮮に行った9万3千人とその家族がいる。それらの人の多くは日本を目指すだろうといわれており、数万人くらいは船に乗ってやってくると覚悟しておく必要がある。例えば、2万人でも日本海側の各県平均で1000人以上である。さらにその中には日本に関係のない一般の北朝鮮人や、場合によっては難民を偽装した中国朝鮮族が来る可能性もある。

 やってきた人の中には麻生副総理が指摘した武装難民がいるかもしれない。北朝鮮の漁船の中には多数の海軍の水産事業所の船がある。この船が難民船になる場合、小銃程度の武器を持ってきても不思議ではない。日本側がどう対応するか分からないし、いざとなったら海に捨てればよいのだからだ。しかも、このようなケースの場合、銃を撃ちながら港に入ってくるなどということはあり得ない。隠し持っていていざというときに出すだろう。その武装解除は誰がやるのか。

 また、病気を持った人が乗っている場合もある。処置をしても保険加入者ではない。しかし死にそうな人がいたら放置しておくことはできない。治療にかかった費用を誰が払うのだろう。感染症に罹患(りかん)していればそれが日本国民にうつる可能性もある。防疫も極めて重要である。

 以上は本当に想定されることの一部のそのまた一部である。このような状況になったとき、言うまでもなく対応するのは日本政府であり、日本人である。外国に任せることは物理的にも不可能だ。欧州の各国も大量の難民を受け入れているし、メキシコとの境に壁を作ると公約したトランプ大統領の米国ですら年間数万の移民を受け入れているのだから。
トランプ米大統領(左端)と面会した横田早紀江さん(前列右から3人目)ら北朝鮮による拉致被害者家族会のメンバー=2017年11月6日、東京・元赤坂の迎賓館(ロイター=共同)
トランプ米大統領(左端)と面会した横田早紀江さん(前列右から3人目)ら北朝鮮による拉致被害者家族会のメンバー=2017年11月6日、東京・元赤坂の迎賓館(ロイター=共同)
 一方、難民が出てくるような状況は悪いことばかりではない。北朝鮮の内部の秩序が崩壊すれば拉致被害者を救出する機会が訪れるからだ。そもそも100人以上いるはずの拉致被害者を、北朝鮮当局との話し合いで最初から帰国させることなど絶対に不可能である。混乱の中、それらの人がどこにいて、どうしているかの情報が入ってくる可能性がある。うまくいけば船に乗って帰ってくる可能性もある。助けに行けるところまで自力で来てくれるかもしれない。