そんな米中首脳会談では何が決まるのか、大胆に予測してみよう。トランプは習近平に北朝鮮の非核化を前提条件として「二者択一」を強く迫る気配が濃厚だ。一つは、北朝鮮に対する原油と食糧の禁輸を含む経済制裁のさらなる強化。端的に言えば、事実上の「経済封鎖」だ。もう一つはアメリカによる予防的な先制攻撃。中国が前者を拒むのなら、後者を容認もしくは黙認させる仕掛けだ。

 米中両国は表面上「北朝鮮の政権交代を目指さない」と言う。だが、二者択一のどちらに転んでも、結果的に金正恩政権は崩壊に行き着く。

 経済封鎖となれば、主役は中国が担うが、日韓両国も一役買うことになる。先制攻撃の場合には、日韓両国は否応なしに協力することになる。そのための事前の調律作業が訪中に先立つ日韓両国訪問だ。

 習近平は上記した二者択一のどちらでも選べる。とはいえ、長大な国境線を接する中国の裏庭での戦乱を黙って見守るのは難しい。金正恩政権に援軍を送ったり、あるいは逆に米軍と共同して金正恩掃討作戦を敢行したりするのは至難の業だ。そうなら、経済封鎖をのむしかなくなる。
新たな最高指導部メンバーを紹介し、拍手する習近平総書記=2017年10月
新たな最高指導部メンバーを紹介し、拍手する習近平総書記=2017年10月
 その場合、問題となるのは、金正恩政権を除去した後に生まれる北朝鮮の新しい政治地図だ。中国は、韓国が北朝鮮を吸収するのはともかく、北朝鮮領内に米軍基地が展開する事態だけは何としても避けたい。中国軍が「金正恩後」の北朝鮮に進駐するのは無理でも、中国軍と気脈を通じた北朝鮮軍を中軸とする「親中政権」を樹立したいところだ。

 今回の米中首脳会談では、トランプが習近平に貿易問題での譲歩だけでなく、安全保障面で十分な「安心」を与えることが必要になる。現実的な「落としどころ」は次の二点だろう。

 一つは、経済封鎖であれ先制攻撃であれ、米韓両軍が北朝鮮領内に兵を進めないという約束。今の韓国左派政権はその気が毛頭ないので、トランプ政権の決断次第だ。この点では、トランプには習近平を安心させられる「隠し球」がある。近い将来での在韓米軍撤収がそれだ。今回、この「密約」が成立する公算が大だ。

 要するに、北朝鮮だけでなく、朝鮮半島全体を米中両国の「緩衝地帯」とするなる新たな北東アジアの政治地図と経済環境の出現である。

 日韓両国にとって、この金正恩後の北東アジアの将来構想が吉と出るか兇と出るかは未知数である。だが、金正恩にとって「大凶」であるのは疑いない。金正恩は、ICBM完成の頂上を目前にして、険しい絶壁に直面する。だが結局は、中途で下山する勇気はなく、遭難の危険を覚悟して無謀な登頂を試みるしか道はなさそうだ。