第3回 愛煙家シンポジウム◎誌上レポート(2013年10月31日開催)

パネリスト 加瀬英明(評論家)
      倉本 聰(脚本家)
      須田慎一郎(ジャーナリスト)
司会進行  二木啓孝(ジャーナリスト)


禁煙団体からのクレーム


 二木 「愛煙家シンポジウム」もこれで三回目となりました。まず、ご報告があります。準備中に、「禁煙ジャーナル」という情報誌を発行している団体から、今回の会場であるアルカディア市ヶ谷(東京・千代田区)に「路上喫煙を禁じている千代田区で、喫煙を奨励するような集まりにどうして会場を貸すのか」というクレームの電話がありました。まるで地下の秘密組織のような言い方です。禁煙ファシズムがひしひしと迫っているのを感じます。……評論家の西部邁さんは「ファシズムそれ自体が悪いわけではない。禁煙ファシズムではなく、禁煙ヒステリーというべきではないか」とおっしゃっていますが、確かに「ヒステリー」という言い方のほうが適切かもしれません。

 加瀬 会場を見まわしますと、私と同じ後期高齢者の方々が盛んにタバコを吹かしておられます。おそらく皆さんも私と同じく十代のころからずっと吸ってこられたのではないでしょうか。それでもいまだに健康で喫煙していらっしゃるということは、タバコが体に悪くない、いちばんの証拠だと思います。

 日本と同様、アメリカでも喫煙率が大きく減っているのに、肺がんは劇的に増えています。原因はタバコではなく、自動車の排気ガスでしょう。にもかかわらず、デトロイトの自動車産業が大変なロビー活動を行って、タバコを悪者に仕立て上げたというのが、アメリカにおいては定説になっている。

 私はもう半世紀以上、千代田区に住んでおりまして、このあいだ区議会の環境文教委員会で路上喫煙禁止条例について意見交換をしてきましたが、屋外でタバコを吸うことを禁じている都市があるのは世界で日本だけだと思います。私は年に2回はワシントンに行きますが、アメリカは禁煙ヒステリーの先陣を切ってきた国であるにもかかわらず、屋外で吸うことはまったく問題にされていません。7年後の東京オリンピックには外国から多くの観光客も来るでしょう。屋外でタバコが吸えないと言ったら、世界のもの笑いになる。

 確かに歩行喫煙は人にぶつかって火傷をさせるとか、ポイ捨ては掃除が大変だという問題があります。しかし、立ち止まって灰皿を持って吸うのを禁じるというのはおかしい。

 いや東京だけではありません、韓国のソウルでも屋外喫煙は禁じられていますと言う方がいらっしゃったので、韓国のジャーナリストに聞いてみましたら、千代田区をモデルにして決めたことだと言っていました。韓国人は日本人は悪いことばかりしたと言いながら、こりずに悪いことを真似ているのは滑稽です。

 実は私は映画のプロデューサーでもありまして、アニメ映画『風立ちぬ』の喫煙シーンに禁煙団体が抗議したと聞いて、わざわざ映画館に出かけましたが、映画としては本当につまらない作品です。皆さん、ご覧になるまでもありません。ゼロ戦の設計者の話ですが、それなら飛行機の設計製造に関しては後進国だった日本が、15年かそこらで世界一の戦闘機を作ったという事実を紹介するべきだし、アメリカやイギリスの飛行機をバッタバッタと撃ち落とすシーンがなければならないのに、それが全然出てこない。
かせ・ひであき 1936
年、東京都生まれ。慶應大学
経済学部卒業後、エール大
学、コロンビア大学に学ぶ。
『ブリタニカ国際大百科事典』
初代編集長を経て、評論家と
して活動。海外での公演も多い。
 それはともかく、設計図を引きながら灰皿にタバコが一杯になっていくとか、肺病の妻の傍で吸うとか、確かに喫煙シーンが多い。しかし、映画でもテレビでも、殺人、暴力、不倫の場面などはいくらでも出てきます。それには文句を言わず、なぜタバコだけを目の敵にするのか。

 アメリカは1920年代に禁酒法をつくった国です。清ピユーリタン教徒が建国した国ですから、とにかくヒステリックなんです。アメリカでは、喫煙者だと生命保の掛け金はグーンと上がります。しかしドラッグ、マリファナ、これらを常用していても掛け金には全く影響がない。ラスベガスでのパーティで、ラスベガスは罪の都(シ ン・シテイ)であると中年女性が言っていました。博打と売春のことを言っているのかと思ったらとんでもない、カジノばかりか、レストランやバーでも自由にタバコを吸わせているからだというのです。アメリカでは、タバコを吸うことがいちばんの〝罪〟なんですね。

 ここに『コンフォール 愛煙家通信』という雑誌がありますが、コンフォールというのは慰安という意味ですね。タバコは人に迷惑をかけない慰安です。いま、新聞やテレビが特定秘密保護法について大騒ぎをしていますが、私はタバコを吸い過ぎて会社の秘密や国家機密を漏らしたなんて話は聞いたことがない。タバコのせいで家に帰らず、夫婦仲が悪くなったなんて聞いたこともありません。酒の方が遥かに悪い。

 私の吸っているマイルドセブンはメビウスという商品名につい先ごろ変わったのですが、JTの幹部に聞きましたら、タバコに「マイルド」という言葉を使ってはならないという国際世論があるからということです。しかし、箱を見たら、「エキストラライト」と書いてある。この表現はいいんでしょうか。そんなことを言い出したら、いま食材や産地の誤表記、虚偽表記などの問題が出ているし、銀座にエレガンスとかラブリーとかそんな名前のクラブがいっぱいありますが、これこそ「虚偽」の記述じゃないか。(会場笑)それに比べれば、喫煙者がマイルドと感じるのであればとくに問題はないのではないか。こうした禁煙ヒステリーは、社会が病んでいるということにほかなりません。

 二木 肺がんの死亡率と喫煙の関連について補足します。1950年の喫煙率は85%。実にたくさんの人が吸っていたんですね。で、その年の肺がんの死亡者数は1119人。それから60年後の2010年の男性の喫煙率は36・6%で、肺がんで亡くなっているのは7万人。つまり、喫煙率が6割近く減ったのに対し、肺がんの死亡者数は60倍に増えている。これでどうして、タバコが肺がんの原因だと言えるのでしょうか。

46万本のラークマイルド

 倉本 ぼくは18歳から吸い始めて、いまも1日に3箱から4箱吸っております。確かに身体に悪い。朝苦しいけれど、それでも吸っている。いまのぼくにとっていちばん体に悪いのは「禁煙」という文字が見えることです。(会場笑)あれが本当にストレスをためます。

TV  STATION
くらもと・そう 1935
年、東京都生まれ。東京大
学文学部卒業後、ニッポン
放送入社。63年、脚本家
として独立。TV ドラマ『前
略おふくろ樣』『北の国から』、
映画『駅 STATION』などの
代表作がある。83年、富良
野塾を開設。2010年、旭日
小綬章受賞。
 だいたい、アメリカ人をはじめ、どうしてみんな健康志向になってしまったのか。長生きして一体何をしたいのか、それがぼくには根本的にわかりません。何かをやりたいから長生きするというのはわかるんですが、ただ健康でありたいがために長生きするというのは、使いみちがないのに金を貯めるという拝金主義と同じ匂いがします。

 以前もあるシンポジウムで、お医者さんたちが「たばこは百害あって一利なし」と口をそろえるので、まるで犯罪人のような気分になったことがあります。しかし、ぼくは21年間『北の国から』というドラマを書き続けました。それを支えてくれた原動力は、46万本のラークマイルドと1300本のジャックダニエルでした。それでも百害あって一利なしなのか。

 ぼくは北海道の富良野で、Soh's BAR(ソーズ・バー)という店をやっているんですが、こんなに喫煙者が差別されるなら、逆に喫煙者が窓側のいい席で、禁煙者は悪い席。ぼくはそう差別します。

 最初は喫煙者オンリーのバーにしようと思ったんですが、結局、分煙ということになった。それなら、禁煙席はマイナス三〇度の屋外で氷のテーブルと椅子にしようと言ったら(会場大爆笑)、それはやり過ぎだと。それでも、for miserable smoker(かわいそうな喫煙者のため)のバーとして、おかげさまで繁盛しております。

 たばこ税が投入されているはずのJR北海道、JR東日本には、ラウンジすらありません。北海道は広いから、札幌から釧路まで列車で四時間から五時間かかります。その間、タバコを我慢することができないので、車で往復することになる。本当に当たり前のことが当たり前でなくなっている気がします。

 きょうは喫煙自由な集まりですが、たとえば会議中にタバコが吸えないと、ぼくは間が持たない。みなさんがどうやって会社の禁煙に慣らされて、清く正しく生きていられるのかわからないというのが本音です。

 だいたい、タバコのパッケージに「喫煙はあなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます」なんて、なぜ商品にこんなことを書かなくてはならないのか、ぼくにはわからない。このあいだもらったベトナムのタバコのパッケージには、がんに侵された肺の写真がドーンと印刷されていました。なんという不愉快なことをするのか。これは商売としておかしいのではないかと思います。

 先ほどジブリの『風立ちぬ』の話が出ましたけれども、ぼくは、喫煙シーンはいくらでも書きます。そもそも書きながら吸っていますから。タバコを吸うシーンが多いから悪いというのは、「凶器である刀を差しているから時代劇はけしからん」と言っているのと同じで、水戸黄門も、大岡越前もすべてダメということになる。そんな批判
をまともに相手にするのはばかばかしい気がします。

 チャーチルとか、吉田茂とか、ハンフリー・ボガートとかが生きていたらどういう態度をとっていたでしょうか。アメリカは禁酒法を言い出した国だから、禁煙法もそのうちなんとかなるだろうと思っていたんですが、一向にやむ気配がない。カナダでは屋外でタバコを吸うのはかまわないが、そのかわり酒を飲むのは禁止されている。だから、打ち上げのときには、中でビールを飲んでは、外でタバコを吸う。それを繰り返しているうちに、どっちがOKでどっちがダメなのかわからなくなってしまった。まるでコメディですよ。

 二木 新幹線には喫煙ルームというのがありますが、狭くて車椅子は入れません。配慮のつもりがまったく配慮になっていない。あの狭い所に押し込まれること以上に、そういう点にいちばん腹が立ちます。

 列車と言えば、JR九州が「ななつ星」という豪華寝台列車を走らせていますが、一泊15万円から40万円という高額な料金を取っておきながら、車内はすべて禁煙なんですね。JTがお金を出して喫煙車をつくらせたらいいのではないでしょうか。セブンスター(七つの星)ということで。(会場大爆笑)

だまされた日経新聞

 須田 反喫煙の背後に何があるのかということをわれわれは正しく認識する必要があります。ヒステリックな動きや喫煙に関する無理解に加えて、反喫煙、禁煙が、利権やビジネスになっているという事情があるように思われます。

すだ・しんいちろう 1961
年、東京都生まれ。日本大
学経済学部卒業。経済界記
者を経てフリー・ジャーナリス
トに。執筆活動のかたわら、テ
レビ、ラジオの報道番組で活躍。
『ブラックマネー』『下流喰い
―消費者金融の実態』など著書
多数。
 禁煙外来というのがありますね。薬の処方を受けるのですが、これには健康保険が適用されます。保険の対象は当然二十歳以上です。ところが、これを未成年にまで広げてほしいという要望が製薬会社や病院から出ている。未成年が禁煙外来に通ってタバコをやめるというのはおかしいでしょう。親が強制的に喫煙をやめさせるのが当たり前です。

 80歳を過ぎたおばあさんが禁煙外来にかかるというケースもあります。理由は、長生きしたいからだそうですが、いまさらやめてもあまり効果があるとは思えない。

 こうした矛盾を見ると、やはり製薬会社や医師にとって反喫煙および禁煙が非常に大きなビジネスチャンスになっているとしか思えません。きょう会場にクレームをつけてきたような団体を動かすことによって、さらにそれを推し進めようとする意図が強く伺えます。

 JR東日本は現在すべて禁煙になっています。ところが、JR東日本管内で例外的にタバコの吸える車両というのがある。それは寝台列車なんです。試しに乗ってみましたら、どこにも吸えるところがない。車掌に聞くと、ベッドメイクをする前ならば灰皿があり、吸ってもいいことになっているが、すでにベッドメイクされているので吸えませんということでした。納得がいかないので、布団を外して吸わせてくれと言いましたら、こっそり吸わせてくれましたが。

 何故吸えるかといえば、飛行機との競争というビジネス上の理由があるわけです。飛行機は完全禁煙ですから、鉄道を利用すれば吸えますよということで差別化を図ることになる。八時間も十時間も禁煙を強いると、喫煙者の客が逃げてしまいますから。

 関西圏の私鉄に目を向けると、たとえば近鉄には喫煙コーナーもあるし、喫煙車両もある。これなら車椅子の方々もタバコが吸える。なぜかといえば、やはりライバルが多いからでしょう。JR東日本がファシストのように禁煙を押しつけるのは、ライバル不在で、独占的なビジネスが行えているからという気がしてなりません。

 加えて、禁煙学会の存在が気になります。先ほど話の出た『風立ちぬ』にクレームをつけた団体ですね。「学会」などと名乗っているから、いかにも科学的な研究をしている機関のように思われるけれども、彼らの主張には、科学的根拠のないものが多分にある。

 日本経済新聞に、タバコの煙は中国で問題になっているPM2・5と同じ大きさだから危険なのだという禁煙学会の主張をうのみにした記事が出ていました。何もわかっていない。PM2・5というのはあくまで粒子の大きさのことであって、それ自体が何か病気を引き起こすものではありません。

 日経という大新聞が、非科学的というより無知な主張をそのまま正しいこととして紙面をつくってしまった。「学会」という名前にだまされて、そういうことが起こるのです。禁煙学会は「学会」というようなものではまったくない。カルト集団です。こういう団体に対してアカデミックな科学的根拠に基づいた主張をしていくのがわれわれの使命だと強く思いますね。

行政は民間の経営に口出しするな

加瀬 日本の愛煙家が恵まれているのはタバコが安いことですね。アメリカでは一箱10ドルします。イギリスも高い。アメリカでは州それぞれが独自の法律を持っている独立国みたいなものですから、たばこ税の安い州から高い州に、マフィアがトレーラーで密輸するんです。ときどき、州境に検査官が立って取り調べをしています。

 禁酒法時代の本を読むと、酒を飲むやつは、意志が弱いと書かれている。いまは、タバコがそれにあたりますね。タバコに対するアメリカ社会の締め付けは相当きつい。喫煙者というだけで就職にも影響します。

 日本では、こんな素晴らしいシンポジウムが開けますが、アメリカではとてもできないでしょうね。ナチスのホロコーストを否定するシンポジウムなどをやったらそれこそ大変ですが、それに近いものがある。

 河野洋平さんという、ちょっと頭のおかしい政治家が1993年に、韓国の主張する慰安婦問題を認め、謝罪したために、いま世界に誤解が広がっています。私がお金を出すから、ワシントンで慰安婦の客観的なシンポジウムを開かないかとニューヨークの著名な学者に提案したら、それはホロコーストを否定するシンポジウムのようなものだから無理だと言われました。東京のど真ん中でこういった集まりを行えるのだから、日本はいい国です。タバコを吸ってなぜ悪いなんていうシンポジウムはアメリカでは絶対できません。

 倉本 中国の文化大革命のときの映画担当官というのが、中国では非常に有名な俳優だったのですが、美食はいけないと言われ、それならば生きているかいがないとズドンとピストル自殺をしてしまったことがあったんです。ぼくはそこまでは出来ないけれども、喫煙のままならない外国にはもう行きたくないから、パスポートを破り捨てました。それ以来一度も行っていません。やめられない人は意志が弱いというけれども、このご時世に吸っている人のほうが意志は強いと思いますよ。
ぼくは、周囲で禁煙をした人間に、意志の弱いやつだなって言っています。

 いつも泊まるホテルにタバコを吸えるラウンジがあるんですが、この前、ホテルマンが車椅子で鼻にチューブを入れたおばあさんを連れてきた。不思議に思って見ていたら、ポケットから煙草を出してチューブを外して吸い始めた。思わず拍手してしまいました。

 須田 日本では条例によって屋外での禁煙が強制されている地域がある。これは、初めは受動喫煙に対するリスクを軽減するといったような理由ではなくて、千代田区の場合は住民税を払っている区民が少ないという特殊な事情の下で、路上に捨てられた吸い殻を清掃するコストを住民に払ってもらうには問題があるだろうということで路上喫煙を禁止した。その後、今度は受動喫煙防止ということで店舗やオフィスといった場所で禁煙が広がり、どんどん吸うところがなくなっていった。先ほどもお話がありましたが、外国では屋内は禁煙であることも多いのですが、屋外ではほとんど喫煙可能です。ニューヨークのセントラルパークでは吸えなくなりましたが、ただこの場合は、公園にペットを連れてきてはいけないとか、大音量の音楽を流してはいけないとか、それと同列なんです。他の人が迷惑に思うことは一律禁止。だから喫煙者が狙い撃ちされているわけではない。

 またニューヨークにはプライベートな公園も多くあって、そこではちゃんと灰皿が置いてあって吸えるようになっている。もちろん歩道では吸える。日本で生活している人間の目から見ると、これは危ないのではないかと思うときもあるし、注意したくなるような場合もあるんです。

 ヨーロッパでは喫煙文化が根づいています。フランスなんてとくにそうで、室内は禁煙でも、屋外はまったく吸ってかまわない。カフェも屋外席では吸えるわけですよ。つまり、どこでも吸えるので、喫煙場所はどこですかと聞いても、質問の意味を理解してもらえない。そういった意味では、日本の喫煙者は不幸な境遇に置かれていると思いますね。

 自治体の対応について話しますと、神奈川県にしても兵庫県にしても、行政側は全面禁煙にもっていきたかった、しかし、旅館業界や飲食店業界とのせめぎ合いで現在の完全分煙という状況になっている。ところが、京都府で面白い動きが起こっています。京都府、京都市、そして業界団体が、喫煙者の観光客に対する配慮について協議した結果、「喫煙」「分煙」「禁煙」というステッカーを店頭に貼って、お客さんに入る店を決めてもらおうということにした。行政が民間企業の経営に干渉するというのはどう考えたっておかしい。だから、ほかの自治体も共存共栄で決着をつけた京都を見習うべきだと思います。

 二木 世田谷区の下北沢でも、分煙、喫煙、禁煙、時間帯禁煙というステッカーを貼って、各店舗に任せている。行政とは関係なく、いわゆる「営業権」を保証して、喫煙者と非喫煙者が選択できるようにするのはいい試みだと思います。

 須田 神奈川県の松沢前知事の実績を考えてみると、受動喫煙防止条例しかない。この条例は誰しも表立って反対できない、そういう進めやすい施策でしたから。

 二木 面白いのは、これまで罰則が適用されたことは一度もない。過去のシンポジウムにもご登場いただいた弁護士の溝呂木雄浩さんが言うには、条例というのは、あくまで法律の下にあるものだから、もし受動喫煙防止条例違反で摘発されたら、それは営業権の侵害にあたる憲法違反である。それがわかっているから一件も違反事例が出てこないのだと。ところが、須田さんがおっしゃるように「自粛」といえば誰も逆らえない。ジワジワとタバコを吸ってはいけない空気を醸成してしまう
のは非常に巧妙かつ狡猾なやり方ですね。

 倉本 でもなぜ路上でタバコを吸ってはいけなくて、あれだけ排気ガスをまきちらしている自動車は通っていいんでしょうか。これがぼくにはわからない。あの排気ガスはタバコの煙の何百倍も害があると思いますよ。それを声高に言う人がいない。

 須田 厚労省が昔、喫煙もお酒もガンになるという「喫煙と飲酒」という小冊子をつくったことがあるんですよ。ではなぜ、飲酒を制限するような法律ができないのか。それは、業界団体が非常に多くて、強いからなんです。タバコだと一社だからやりやすい。自動車についても、何社もの大メーカーが反発するから、法律を作れないという事情もあると思います。

 加瀬 私も以前、携帯灰皿を持ってタバコを吸っていたら、吸わないでくださいと言ってきたおばさんがいました。それで、あなたは車に乗りますかと聞いてやった。もちろん乗るという。だから、あなたが自動車に乗らないというなら私も吸うのをやめましょうと言いました。どちらが有害だという話ですよ。

喫煙者は警察に出頭すべし

 二木 会場に千代田区議会議員で、もと区議会議長の小林やすおさんがいらっしゃいますので、お話をうかがってみたいと思います。その後、ご意見やご質問のある方がいらっしゃいましたら、発言をお願いします。

 小林 石川(雅己)区長が十年少し前に、路上喫煙禁止条例を言い出したとき、区長自身はヘビースモーカーですから、私は不思議に思ったんです。問題はその当時の喫煙者のマナーでした。路上喫煙者が手にしているタバコの火は子供の目のあたりにきたりするから危険である、これは禁止すべきだというのです。これはそのとおりですから、千代田区議会全員で賛成したんです。私は秋葉原に住んでいるのですが、五年前はポイ捨てで非常に路上は汚かったのが、そのおかげでかなり改善されました。

 しかし、現状をみると喫煙場所が明らかに減ってきて、屋内でも禁煙が増えてきた。そこで、私は議会の一般質問の中で、千代田区には39億円ものたばこ税が一般財源として入ってくる。その一割でもいいから、分煙施設を作るのに使ったらどうかと提案しました。賛同する議員も多いのですが、区長がウンと言わない。これについては今後も粘り強く頑張っていこうと思います。

 ただ、喫煙施設をつくるには千代田区は土地が少ないという問題があり、また、私有地に灰皿が置いてあれば規制は出来ない。近隣の非喫煙者が迷惑しているということもあります。青空天井の喫煙所となってしまう。そうすると近隣の方に迷惑がかかってしまうということはあります。

 それから、いろいろな方のお話を聞くと、受動喫煙がどうこうという人は、私の聞く限りそれほどいないのですが、やはり、匂いがいやだという意見が多い。排気ガスは大量に拡散しているんでしょうが、匂いはさほど気にならない。ですので、議員同士で相談しているのは、密閉式の喫煙所設置が出来ないかということです。

 発言者A もし受動喫煙で人が死んでいるというのが本当なら、われわれは殺人者だということになる。何十人かそろって警察に出頭しようかと思っています。(場内爆笑)

 発言者B JRには、たばこ税が投入されているのに、なぜタバコを吸えないようにしているのか疑問です。旧国鉄だけでなく、古い話でいえば満鉄の救済もしていることになると思うんですが。

 須田 それは私もJR東日本に聞いてみたことがあるんですよ。そうしましたら、その税金は国鉄清算事業団に流れているのだから、JRは関係ないということでした。また、警察に自首するという話は冗談ではなく、そんなに危険なものだったら、麻薬のように法律で禁止してしまえばいいんです。そこの矛盾をついて行かなければなりませんね。

 発言者C 千代田区でたばこ屋をやっております。千代田区には大勢のサラリーマンが集まります。税金を三十九億円も取られているのに吸うところがない。なんでタバコ屋さんはそのことをもっと区に強く言わないんだとお客さんからこぼされています。だけど、石川区長が何とも言うことを聞いてくれません。

 仲間のタバコ屋さんがだんだん減って来て、コンビニに取って代わられていますが、六七・五%の税金が含まれているタバコを買ってくださっている喫煙者のみなさんはもっとお気の毒です。(会場拍手)長いものには巻かれろということなんでしょうか。なにかいいアイディアはないものでしょうか。

 二木 まさに、いまの方がおっしゃったように長いものには巻かれないと、そういう気持ちを持ち続けたいと思っています。

 やはりいまの禁煙ヒステリーは異常です。タバコがこれほど社会悪のように言われている状況で、少しでもそれに対抗する方法を考えていくのがこのシンポジウムの意義だと思います。ありがとうございました。