2017年11月07日 14:53 公開

BBCパノラマ 「パラダイス文書」取材班

世界で最も多額の利益を上げている米アップルが、2013年に巨額の節税行為が問題視された後も新たな仕組みを秘密裏に作り上げていたことが、タックスヘイブン(租税回避地)に関する大量の流出資料「パラダイス文書」の中から明らかになった。

今週報道された「パラダイス文書」からは、アップルがアイルランド子会社を通じた節税をめぐる問題を、タックスヘイブンを積極的に探すことで回避してきたのが分かる。

アップルは、現在2520億ドル(約28兆6650億円)に上る未課税オフショア資金の大半を保有する傘下の会社を、英王室属領のジャージー島に移転させた。

アップルは、新たな仕組みによって納税額が減少したことはないと説明している。アップルによると、同社の納税額は依然として世界最大で、過去3年間に支払った法人税はおよそ350億ドルに上ったという。同社は、法律に則った新たな仕組みによって「」と述べた。

アップルは6日に出した文書でさらに、アイルランドから移転させた業務や投資はないと強調した。

アップルは2014年まで、米国や「ダブル・アイリッシュ」とも呼ばれるアイルランドの税制の抜け穴を使い、南北アメリカ大陸以外で得た利益の全てを、税制上は実質的に無国籍となる複数のアイルランド子会社に集中させ、結果として納税額をごくわずかなものにしていた。南北アメリカ大陸外での利益は現在、同社全体の約55%を占めている。

アイルランドと米国の法人税率はそれぞれ12.5%と35%だが、アップルの海外利益に対する税率が5%を超えることは珍しく、2%以下まで下がった年度もある。

欧州委員会の算定によると、アップルのアイルランド子会社のうちの1社に対する税率がわずか0.005%だった年があった。

2013年に米上院で開かれた公聴会では、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が同社の税対策について説明を求められた。

行政監察小委員会の委員長を務めるカール・レビン上院議員(当時)は、米政府が多額の税収を失っていると怒りをあらわにし、「金の卵を産むガチョウをアイルランドに移した。アイルランドで税を払っていない3つの会社に移した。これらがアップル社の最も収益の高い部分ですよ。皆さん、これは正しいことじゃない」と述べた。

クック氏はひるまず反論し、「我々は支払うべき全ての税を納めている。最後の1ドルまで。節税策に頼ってはいない。(中略)どこかのカリブ海の島に資金を貯め込んでいたりはしない」

アップルの質問状

2013年に欧州連合(EU)がアップルのアイルランド子会社を通じた仕組みについて、調査を開始すると発表した後、アイルランド政府は国内で設立された会社が税制上の無国籍であり続けることは認めないと決定した。

これを受けて、アップルはアイルランド子会社の課税本拠地となるオフショア金融センター(OFC=タックスヘイブン)を見つける必要に迫られた。

2014年3月、アップルの法律顧問たちはオフショア投資関連の有力法律事務所アップルビーに質問状を送った。アップルビーは、今回明らかになった「パラダイス文書」の大半が漏洩した会社だ。

アップルは、OFCの英領バージン諸島、バミューダ諸島、ケイマン諸島、モーリシャス、マン島、ジャージー島、ガーンジー島がそれぞれ、アップルにどのようなメリットをもたらすか知ろうとした。

資料によるとアップルは、「税免除の約束を公式に得る」のは可能か、またアイルランド子会社が「管轄地域内で課税されずに経営活動を行える」と確認できるか、などを問い合わせた。

同社はさらに、政権交代の可能性が高いかどうか、情報はどこまで公開されるのか、地域から会社を移動させるのは容易かを知ろうとした。

流出した電子メールには、秘密裏に事を進めたいアップルの意向も明確に示されている。

アップルビーの上級パートナーの間で交わされた電子メールの一つには、「念を押しておくが、アップル(の幹部たち)は社外の評判に非常に敏感になっている。自分たちの依頼業務について話し合うのは、必要最低限の社員のみに限定すべきだというのが、アップルの意向だ」と書かれている。

アップルは、独自の税制を持ち海外の会社に法人税を課さないジャージー島を選択した。

パラダイス文書からは、2015年の年初から2016年初期にかけて、アップルの2つの重要なアイルランド子会社のアップル・オペレーションズ・インターナショナル(AOI)とアップル・セールス・インターナショナル(ASI)がジャージー島にあるアップルビー事務所によって管理されてきたことが分かる。AOIはアップルのオフショア資金2520億ドルの大半を所有しているとみられる。

この仕組みにより、アップルは世界各国で課税を免れ続けることができたはずだ。

2017年のアップルの会計資料によると、4470億ドルに上った同社の米国外利益について、海外政府に収められた税金はわずか16億5000万ドルで、税率は約3.7%だった。これは、世界の法人税率の平均の6分の1以下にあたる。

アップルアイルランドと対立するEU

2016年8月、3年にわたる調査を終えた欧州委員会はアイルランドがアップルに違法な税優遇を与えたと結論。調査対象に含まれた2003~2013年にかけての期間について、アップルに対する追徴課税130億ユーロ(約1兆7000億円)と金利分の10億ユーロの徴取をアイルランド政府に命じた。

アイルランドとアップルは控訴。クックCEOは、欧州委の判断は「完全な政治的たわ言」だとし、「事実あるいは法律上の根拠がない」と反論した。アイルランド政府は、欧州委が課税主権を侵害していると批判した。アイルランド政府は多国籍企業が同国から拠点を動かす可能性を恐れている。

アイルランド政府は130億ユーロの追徴課税と、控訴審の結果を待つ間、第三者預託の口座で追徴金を管理することに同意した。

2017年10月、欧州委員会は税徴収が依然として実行されていないとしてアイルランド政府を提訴すると表明。アイルランドは、状況は複雑で対応には時間がかかると説明している。

GDPの大幅増

「ダブル・アイリッシュ」と呼ばれる税の抜け穴が使えなくなると、アイルランド政府はアップルなどの企業が利用できる新たな税の規定を導入した。

アップルがジャージー島に移転した会社の一つのASIは、莫大な価値があるアップル社の知的財産の一部の権利を所有しているが、ASIが知的財産をアイルランドに設置された会社に売却した場合、巨額の購入費用は将来の利益によって相殺できる。一方、ジャージー島で登記されたASIは知的財産の売却利益に対して課税を受けない。

アップルはまさにこの制度を利用した。アイルランドのGDPは2015年に26%増という異例の拡大を記録。各社報道は、GDPの上昇は知的財産がアイルランド国内の会社の所有になったのが背景だと指摘している。アイルランドの無形資産は同年、2500億ユーロと巨大な額に増えた。

アイルランド財務省は新制度を導入したのは、多国籍企業の便宜のためだという見方を否定している。

同省は、アイルランドが「国際的な通例」に従っており、「企業の無形資産に対する資本控除を認めるのは特殊なものではない」と説明した。

アップルは子会社2社の課税本拠地をジャージー島に移したことについて、取材への回答を避けた。

同社はさらに、2社のうちの1社が知的所有権の売却を通じて巨額の税控除を受けられるようにしたかどうかについても、コメントを控えるとした。

アップルは、「2015年にアイルランドが税法を改正した際、我々はアイルランド子会社の本拠地を変更することで法を順守した。そしてアイルランド政府、欧州委員会および米国に通知した」と述べた。

さらに、「我々が導入した変更によって、どこかの国での納税額が減ったということはない。実際のところ、アイルランドでの納税額はかなり増え、過去3年間で15億ドル支払っている」と説明した。

(英語記事 Paradise Papers: Apple's secret tax bolthole revealed