元SMAP3人のホンネに国民的アイドルの真髄を見た

『田中秀臣』

読了まで6分

田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 日本のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)、特にその芸能関係において歴史的な3日間だった。元SMAPのメンバー、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾による『72時間ホンネテレビ』(AbemaTV)は、世界水準での注目を集める一大イベントになった。しかも地上波のように計算され、緊密な展開の番組ではなかった。むしろメンバーの素に近い感情のふり幅が存分に映し出され、3日間の緊張と疲労からくるグダグダ感もあり、ただそれが全て新たな自由の息吹の前で素晴らしく昇華されていた。
1年8カ月ぶりの生歌唱で72曲メドレーを披露した左から草彅剛、香取慎吾、稲垣吾郎(C)AbemaTV
 グランドフィナーレの企画「3人だけの72曲生ライブ」を終え、他の出演者たちからの心のこもったエールが流されるエンディング。そこで本当の最後の最後に、元メンバーの森且行が出てきて「ずっとずっと仲間だから」と語ったとき、3人の目には熱いものが流れた。と同時に筆者もまた深い感動に打たれた。そしてTwitterでその思いを簡潔に以下のようにつぶやいた。

感動した。SMAPで感動したのはいつぶりだろうか? この1年、感動よりも息苦しい問題意識しか抱かなかった。それを薙ぎ払う、ともかくいい番組だった。

 このつぶやきには、1000を軽く超えるリツイートと2000を超える「いいね」を頂戴した。SMAPについて書くといつも思うのだが、SMAPのファンの方々は本当に気持ちが温かく、また包容力のある方々が圧倒的に多いことだ。これは多くのアイドル批評家たちが共通して感じていることではないだろうか。

 アイドル批評は、あくまでも客観的な観点からアイドルを評価するスタンスが求められる。それは時にファンの感情とは違う方向にいくだろう。筆者もSNSで何度かその「すれ違い」によってファンの方々からの批判、いやしばしば誹謗(ひぼう)中傷に遭遇することがある。ところが、SMAPの論説を書いたり、感想をつぶやいても、そのような目に遭うことは極めて珍しい。

 むしろ、論説を書くたびに実感するのは、ファンの方々がみんなSMAPを愛し、そして彼らの未来に自分たちの未来も重ねて応援していることだ。その温かい心と秘めた思いに、筆者もまた心を打たれる。これは日本のSNSでは稀有(けう)な体験である。もちろんそれは筆者の個人的な体験だけではない。彼らを見守る世界の人々全ての感情だろう。今回の3人のホンネテレビへの出演で、長い間忘れていた言葉、「国民的アイドル」の本当の意味を思い出した。

 SMAPは温かいのだ。そしてファンもまた温かい。
世界と時代を変えるのはアイドル

 今回のAbemaTVで3人が関係したSNSは幅広い。Twitter、YouTube、ブログなどさまざまであり、3人の使い慣れていない感じさえ、ジャニーズ事務所時代とは異なる自由な雰囲気も感じた。特に森との再会を契機にして、「森くん」がTwitterトレンド世界一を獲得するなど、彼らの人気はネットの中でも健在であった。この自由なアイドルの雰囲気こそ、日本が長く忘れてきた未来への可能性ではないだろうか。

 くしくも、日本経済はようやくバブル崩壊後の長いトンネルを脱するところまできた。ホンネテレビが放送された翌々日、「バブル崩壊」の象徴のひとつでもあった日経平均株価は、ついに崩壊後の最高値を更新した。確実な企業業績の改善を受けて、今後株価は日本経済の巡航速度に20数年ぶりに戻るだろう。まだ何度か調整局面があるにしても、それは日本経済の上昇トレンドを阻害するほど深刻にはならないだろう。もちろん好調なのは株価だけではなく、雇用の改善も継続しているので、若い世代を中心にして労働市場は堅調だ。いろいろ難題はあるが、それでもこの20数年の長期停滞にいよいよ別れを告げる大きな段階まできたといえる。

 そして20数年の長期停滞の苦しみ、特に「ポスト団塊世代」といわれる「失われた20年」の苦しみを最も受けてきた世代。その世代の代表こそが、今回の3人、森、そしてジャニーズ事務所に残る2人の「オリジナルSMAP」なのだ。SMAPはその意味で、日本の長期停滞をともに苦しみ、戦い、そして長期停滞が終わるのとまったく軌を一にして、メンバーの大半が「自由」を得た。このような時代との符号。時代の精神と経験を象徴することこそ、国民的アイドルという称号にふさわしい。
森且行(右)と再開した(左から)稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾(C)AbemaTV
 日本を代表するアイドル批評家の中森明夫氏が、筆者にTwitterで以下のように書いたことは、まさに真実を正確に描いている。

やっぱり世界と時代を変えるのはアイドルですよね!

 そしてこの約30年をともに歩んできたファンの方々も、SMAPの生み出した喜び、楽しさ、癒やし、そして魂の共感を得てきた。簡単に約30年と書いたが、とんでもない永い時だ。ファンのみなさんに敬意を表したい。日本のアイドル文化が豊かなのは、みなさんのおかげであると。アイドル批評の端くれにあるものとしてこれだけは書いておきたく、この小論を書かせていただいた。そしてこれがこの1年のSMAPをめぐる問題について何度も書いてきた最後の論説となるだろう。

ありがとう 新しいこの場所が好きになった 風通しいい感じ ありのまま伝えたい

 3人とSMAPファンだけではなく、今度は、われわれ国民全員とそして日本経済が「新しい場所」を獲得する番である。

この記事の関連テーマ

タグ

玉木雄一郎にモリカケ追及の資格なし

このテーマを見る