小山朝子(介護ジャーナリスト、介護福祉士)

 「人材不足」と「低賃金」。この二つの問題に帰結する介護の記事を目にするたびに「またか」と思うようになってきた。こう書くと問題に直面している方々から批判を受けそうだが、それを承知の上で本音を吐露した。

 「人材不足」と「低賃金」は数値で示すことができるが、数値で示すことができない課題もあり、そうした課題をていねいに拾っていくことが「介護職が辞めない」職場をつくるための本質的な課題なのではないかと感じている。

 外国人を介護職に受け入れる取り組みに関しても、「介護人材の不足を補う存在」として、数に焦点を当てて論じられている。2017年11月から施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」についてもしかりだ。

 この「外国人技能実習制度」は発展途上国の若者を受け入れ、実践的な技能・知識を学び、帰国後、母国の経済発展に役立ててもらうことを目的としている。従来は農漁業や製造業といった職種において実施されてきたが、このたび「介護」が加わった。対人サービスのジャンルでは初となる。
(iStock)
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 同制度では、これまで長時間労働や残業代の未払いなどの劣悪な環境のほか、実習生の失踪者の増加など数々の問題が浮上している。そのため、外国人技能実習生の受け入れを予定している施設からは、文化や価値観の違いを踏まえた教育ができるか不安の声もあがっているようだ。

 今年7月、私は外国人介護職の受け入れに成功している施設があると知り、担当編集者とともに山形県内にある特別養護老人ホーム(以下、特養)へ取材に出向いた。特養は利用者の介護を看取りまで行う施設である。

 この特養で取材したのはEPA介護福祉士候補者(以下、EPA候補者)の外国人だ。EPAとは、国・地域の間で、関税を引き下げて貿易を自由化するだけでなく、お互いに投資や人の行き来をしやすくして経済の結びつきを強める包括的な協定だ。EPA候補者は、日本の介護施設で就労、研修をしながら、日本の介護福祉士資格の取得を目指す。