冒頭で、介護現場には「数値で示すことができない課題がある」と述べたが、上記の事例のような標準化も、その一つである。今後外国人を職場に受け入れようとする施設は、「人材不足を解消するため」という視点のみならず、自らの施設で行っている介護サービスの質を省みる機会と捉えてみることをおすすめしたい。

 例えば、自分たちが提供している介護の技術をわかりやすい日本語で解説した「手順書」のようなものを作成することが可能かどうか。一人ひとりの職員が思い思いの方法で介助をし、情報の共有がなされていなければそれを作成することは不可能だ。

 外国人の実習生に介護の知識や技術を伝達することは、自分たちの日頃の業務を振り返るきっかけとなり、サービスの質を向上させるヒントとなりうる。むろん、手順書を作成する時間を確保するには業務の効率化をはかることも求められる。

 介護は単純労働ではない。とくに認知症の高齢者が増加している昨今、プロとして介護を行うには相応の知識や技術が必要だ。外国人技能実習制度による人材を「使い捨て」のように考えていたのでは信頼関係は構築できず、継続的な受け入れは困難になる。
(iStock)
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 外国人技能実習生のみならず、彼らを受け入れる日本人職員もともに成長できるような関係性が望ましい。介護職が働きやすく、向上心がもてる職場づくりは、外国人を雇用している、していないに関わらず、現在の日本の介護現場が抱える課題であるといえる。

 私が2009年に台湾の高齢者施設を視察した当時、台湾人の介護職とともにインドネシアやフィリピンからやってきたという介護職がはつらつと働いていた。取材に応じてくれたインドネシアの女性は「お給料は欠かさず家族に仕送りしているのよ」と話してくれた。あのまぶしい笑顔は今も覚えている。

 諸外国と比較しても日本の介護サービスの質は高いという評判はしばしば耳にする。世界に誇れる介護サービスを提供し続けるためにも、介護現場の課題が「量的確保」のみならず、「質的確保」の面からも論じ、検証されていくことを期待したい。