中村聡樹(医療介護ジャーナリスト)

 介護人材の不足は、新聞紙上で語られる以上に深刻度を増している。

 新卒学生の募集では、大手企業が内定のピークを迎える6月ごろの段階で、介護事業者への応募はほとんどないというのが現実である。企業から内定を受けられなかった学生が、仕方なく応募してくる9月以降からが採用活動のピークとなっている。もちろん、早くから介護の仕事に就きたいと考える学生もいるが、大半は就職先がなくて介護業界の門をたたくというケースが多い。

 「必要な人数を確保するために、採用基準を低く設定することになり、結果的に優秀な人材を得ることは難しくなっています。就職しても3カ月くらいで辞めていく学生も少なくないですね」と介護事業者の採用担当者は語っている。

 苦労して集めた人材も、仕事がきつく給料が安いという環境では長続きしない。多くの介護施設や訪問介護事業者が、年中、人材募集を行っている。転職やパートの募集に加えて、最近では定年退職したシニアを募集のターゲットにしている事業者も増えている。定年制を廃止して、働く意思があればいつまでも働ける環境整備に力を入れる企業も増えてきた。

 しかし、これほど努力を重ねても人材不足の解消には至っていない。今年4月にオープン予定だった特別養護老人ホームが、半年たっても開業できないなどという事態も起こっている。表向きは工事の遅れが理由となっているが、実際は、人材確保が進まず施設をオープンできないというのが本当の理由である。

 オープンまでこぎつけた施設でも、人材不足の影響で、すべての居室を稼働させることができないケースもある。入居待ちの高齢者の数が40万人以上といった報道もあるが、受け入れをしたくてもできない施設がかなりの数にのぼっていることはあまり知られていない。
(iStock)
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 一方、東京や大阪など都会の事情と地方ではその深刻度が大きく違う。地方では本当に人材が集まらない。コンビニエンスストアで働く方が時給の高い地域も少なくない状態で、人材確保は、ほぼ不可能な状況に追い込まれている事業者もある。