日本の介護事業者がアジア地域に進出するためには、当然、日本式の介護システムを習得した現地人材の育成や、その人材の環流が必要不可欠である。こういった観点から、政府は、介護職への外国人受け入れの間口を広げている最中である。つまり、介護分野において、アジアから日本への留学生や技能実習生を増やし、母国帰国後に、現地施設での即戦力となってもらったり、経営に参画してもらったりすることを可能にするための法改正を行っているのである。
介護福祉士の国家試験に向けた講習で、休憩中に記念写真を撮る外国人の候補生=2017年5月、大阪市
介護福祉士の国家試験に向けた講習で、休憩中に記念写真を撮る外国人の候補生=2017年5月、大阪市
 しかし、このように外国人人材の介護職への受け入れを推進していくことで問題は起きないのだろうか。

 まず、EPA介護福祉士については、公益社団法人国際厚生事業団が唯一の受入調整機関として、厚生労働省等と連携しながら運営しており、人権侵害や事故発生等の大きな問題は起きていない。そのため、今年から、介護福祉士資格取得後は、施設内介護のみならず訪問介護に従事することも解禁された。介護福祉士候補者の介護福祉士国家試験の合格率も、基本的に上昇傾向にある(最新で49・8%)。

 次に、在留資格「介護」は、介護に必要な知識を体系的に学ぶ養成施設を卒業し、介護福祉士国家試験に合格した者のみが対象となっており、一定程度以上の専門性が制度的に担保されている。さらに、日本の専門学校等に通学している間に、アルバイト活動を行えるため、それにより、言語化されない日本社会のルールや「空気」を読む力など日本独特の文化に触れる機会を得ることもできる。したがって、チーム作業である介護業務に従事しても、大きな問題は起きないのではないかと考えられる。

 懸念が残るのは、技能実習制度による受け入れだが、2016年に新しく成立し、今年11月から施行された技能実習法が規定どおりに厳格に適用されるのであれば、大きな問題が起きる可能性は高くない。確かに、技能実習の3年目までは、自己都合による転職が基本的に認められておらず、その意味で完全な労使対等が実現しないから、人権侵害等の問題を引き起こす要因となりうる。

 しかし、技能実習法は、そのような3年目までは完全な労使対等が実現しないことを前提としつつ、それでも問題が起きないようにするために、刑罰規定を含め、極めて厳格な規制を行っている。さらに、介護職種については、コミュニケーション能力が重要な対人サービスであり、また、事故が起きたときの被害が深刻であることから、他の職種に比べて、かなり厳しい上乗せ要件が規定されている。