チャールズ英皇太子、自身の投資先を有利にする活動か パラダイス文書

『BBC』

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2017年11月08日 18:28 公開

BBCパノラマ 「パラダイス文書」取材班

チャールズ英皇太子が主張していた地球温暖化防止策をめぐる取り決めの変更が、自身のオフショア投資先を有利にする内容でもあったにもかかわらず公表されていなかったことが、大量に流出したタックスヘイブン(租税回避地)に関する資料「パラダイス文書」で明らかになった。

BBCパノラマ取材班が資料を調査したところ、チャールズ皇太子の収入源となっているコーンウォール公領は2007年にバミューダ諸島の会社「サステナブル・フォーレストリー・マネジメント」(SFM)の株式11万3500ドル(約1290万円)相当を秘密裏に購入。同社は排出権取引に関する取り決めの変更によって利益を得る形になっていた。

すでに解散しているSFMの役員にはチャールズ皇太子の友人も含まれていた。コーンウォール公領は、チャールズ皇太子は投資には直接関与していないと述べた。

皇太子の公邸、クラレンス・ハウスの報道官は、チャールズ皇太子が「(コーンウォール公領の)投資先の会社だったとしても、単にそのために意見を述べるようなことは絶対になかった」と語った。

報道官は、「気候変動については、皇太子の意見はよく知られており、我々の環境が直面する地球温暖化の脅威について30年以上にわたって警告を発してきた」とし、「排出権取引は、皇太子が1990年代から擁護してきたことの一事例に過ぎず、現在においても支持し続けている」と述べた。

報道官はさらに、チャールズ皇太子には「幅広い話題について考えや提案を述べる自由がある」とし、気候変動の問題を「深く心配している」が、助言を受け入れるかどうかは人々が決めることだと語った。

英首相の諮問機関「公的生活の倫理基準に関する委員会」の委員長を務めていたサー・アリステア・グレアムはチャールズ皇太子の行為は深刻な利益相反に相当すると述べた。

サー・アリステアは、「皇太子自身のコーンウォール公領による投資と公的活動で目指していることとの間に利益相反が生じている。彼のような重要な地位にあり、影響力もある人がこのような深刻な相反に関わっていることは残念なことだ」と語った。

オフショア投資関連の有力法律事務所アップルビーから流出した資料からは、コーンウォール公領が2007年にケイマン諸島にある4つのファンドを通じて合計390万ドル相当のオフショア投資を行ったことが分かる。投資に違法性はなく、脱税行為があったとも示されていない。

コーンウォール公領の報道官は、チャールズ皇太子は個人資産から得られた収入に対する所得税を自主的に納めていると語った。さらに、コーンウォール公領の投資は「場所あるいはその他の仕組みのあらゆる面に基づく税制上のメリットはなく、結果として英歳入関税庁の税収が失われたということはない」と述べた。

秘密裏にされた出資

チャールズ皇太子が地球温暖化対策をめぐる2つの重要な取り決めへの変更を訴え始めたのは、SFMが皇太子の事務所に政策に関する資料を送った何週間か後のことだった。

公領が保有する株式の価格は1年余りで3倍近くに増加したが、理由ははっきりしない。チャールズ皇太子の主張は注目されたものの、取り決めは変更されなかった。

8億9600万ポンドの資産規模があるコーンウォール公領の運営には皇太子が「積極的に関わっている」とされるが、今回明らかになった資料によると、2007年2月にSFMの株式を購入。11万3500ドルの当時の価値は約5万8000ポンドだった。

SFMの役員の一人で、環境保護を支援していた富豪の銀行家、故ヒュー・バン・カットセム氏はチャールズ皇太子に最も近い友人の一人だったとされる。

コーンウォール公領による投資を承認したSFM役員会議の議事録には、「バン・カットセム氏によるコーンウォール公領の紹介に会長は謝意を表し、法律上求められる情報公開に関係する場合以外にはコーンウォール公領の出資を部外秘とすることに役員会は全会一致で同意した」と書かれている。

政策の変更

SFMは、地球温暖化対策として国際協定に基づき始まった排出権取引に参加しており、「熱帯および亜熱帯森林」の排出権の取引を希望していたが、2つの重要な国際協定である欧州連合(EU)の排出権取引制度(ETS)と京都議定書は熱帯雨林をほぼ全て適用外にしている。

資料によると、コーンウォール公領がSFMに出資した際、SFMは排出権に関する取り決めの変更を訴えていた。

SFMは、米国や欧州の新たな法律や規制に「熱帯雨林の排出権が含まれるよう」各国政府に働きかけるため、京都議定書がまとめられた際の米国の首席交渉官だったスチュアート・アイゼンスタット氏と契約した。

2007年2月の役員会議の議事録には、SFMは年末に予定されていた京都議定書をめぐる会議の前に「森林の排出権支持に向け、一連の出来事に影響を及ぼすための方策」を取っていると書かれている。

コーンウォール公領による出資から4カ月後の6月6日、バン・カットセム氏はSFM会長に同社の主張を説明する資料を皇太子の事務所に送るよう要請した。

パリで開かれた役員会議の議事録で「公共政策と意見の擁護」と題された文書には、「会長は会社がさまざまな政策決定者のために準備した一連の資料について委員会で紹介した。(中略)バン・カットセム氏は(中略)プリンス・オブ・ウェールズ(皇太子)のために一セット準備するよう要請した。会長はそうすると約束した」と書かれている。

熱帯雨林プロジェクト

4週間後の7月2日に行われた講演でチャールズ皇太子は、熱帯雨林からの排出権が排除されているとしてEUのETSと京都議定書を批判し、取り決めを変更するよう訴えた。

「地域社会におけるビジネス・アワード」夕食会で登壇したチャールズ皇太子は、「現状の京都議定書では、熱帯雨林のある国々は、森林を伐採した上で新たに木を植えることでしか国内の森林から排出権を得ることができない」と述べた。

「欧州の排出権取引は発展途上国の森林からの排出権を排除している。正しいことだとは思えず、不十分なところを早急に修正できるように国際社会が協力するよう訴える必要がある」

チャールズ皇太子は2007年10月に「王子の森林プロジェクト」を開始し、「熱帯雨林の伐採が気候変動に与える影響について世界での認知度を向上し、死んでいるよりも生きている熱帯雨林が価値があるようにする方策を見つける」のを目指すとした。

プロジェクトの開始にあたり、チャールズ皇太子は、「京都議定書は現存する熱帯雨林を守る仕組みを持っていない。植林と森林再生計画に排出権が認められているが、すでにある森林の維持には認められていない。ETSは開発途上国の森林を丸ごと排出権から排除している。(中略)気候変動問題の高い緊急性は原生の熱帯森林を排除するのではなく受け入れる対応を必要としていると、我々は当然認めるべきではないだろうか」と語った。

これ以前にチャールズ皇太子が京都議定書やEUのETSの取り決めの変更について講演で触れたことを示すものをBBCパノラマは確認できていない。

「助けの手」

その後、半年にわたってチャールズ皇太子は熱帯雨林について講演で触れ、熱帯雨林に関する動画を出している。

2008年1月に出された動画で皇太子は、「目先最も優先すべきことは、炭素および生態系面での熱帯雨林の世界全体に対する貢献度の本当の価値を見いだせる新たな排出権取引市場を開発することではないかと私は考えている」と語った。

同年2月にチャールズ皇太子はゴードン・ブラウン首相(当時)との非公開の会合でも熱帯雨林について言及したとされる。

その数日後、チャールズ皇太子は欧州委員会のジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ委員長(当時)のほか、環境、エネルギー、貿易、農業を担当する各委員とも会見した。

欧州議会の議員150人の前で行った演説でチャールズ皇太子は、「欧州排出権取引の改正版では、市場原理による熱帯雨林の存続に向けた助けの手、非常に目に見える形での支援にも拡大されると強く期待している。(中略)何十億もの人々の生活があなた方の対応に依存している。もしためらい、失敗すれば、我々の誰一人として子供たちや孫たちから許してもらえないだろう」と語った。

世界金融危機が進行しつつあった2008年6月18日、コーンウォール公領はSFM株を売却した。

資料によると、公領は50株の売却で35万5000ドルを受け取った。SFMはその後、解散した。

コーンウォール公領は1337年に設立され、収入はプリンス・オブ・ウェールズとその子供たちの公的および私的活動や慈善活動に使われている。独立した監査が行われ、議会にも報告がされている。

公領の報道官は、公領が「投資先のセクターを決める上で責任のある投資方針」を守っていると述べた。

パラダイス文書からは、2004~05年にかけてエリザベス女王の個人資産のうち1000万ポンドがバミューダ及びケイマン諸島のオフショア投資に向けられたことも明らかになっている。

(英語記事 Paradise Papers: Prince Charles lobbied on climate policy after shares purchase