以下の記述はメモをもとにしたものだし、そもそも裁判傍聴のようにメモをとることに専念できるわけではないから、細部は正確でない部分もあると思う。ニュアンスが違っているといった指摘が植松被告からなされた場合は、次号で訂正していくことにしよう。正確さを期すために、被告の見解はできるだけ手紙などの文書で送ってもらうのが望ましいのだが、なかなかそうはいかないこともある。以下の内容は、植松被告との接見の直後、記憶をたどってメモをまとめたものである。

 篠田 この間、君はヒトラーの思想と同じだとよく言われているけれど、君自身は手紙で、それは違うと言っている。だからヒトラーと君の考えのどこがどう違うのか確かめたい。君は昨年2月に津久井やまゆり園で職員らと話をした時に、「それじゃヒトラーと同じじゃないのか」と言われ、それを覚えていたので、措置入院の時に「ヒトラーの思想が降りてきた」と語ったという。それで間違いない?
 植松 その通りです。もともとヒトラーがユダヤ人を殺害したのは知っていましたが、障害者をも殺害していたことは知らなかったんです。その時、職員から初めて聞きました。

 篠田 措置入院の時に「ヒトラーの思想が降りてきた」と言ったのはどういう意味だったの?
 植松 それほど深い意味を考えて言ったわけではありません。今ちょうど『アンネの日記』を読んでいるのですが、ヒトラーと自分の考えは違います。ユダヤ人虐殺は間違っていたと思っていますから。

 篠田 じゃあナチスが障害者を殺害したことについてはどう思うの?
 植松 それはよいと思います。ただ、よく自分のことを障害者差別と言われるのですが、差別とは違うと思うんですね。

 篠田 君は津久井やまゆり園で起こした事件については、今も間違っていたと思っていないわけね。
 植松 安楽死という形にならなかったことは反省しています。

 篠田 つまり死を強制してしまったことね。でも殺されるほうは同意するわけないじゃない。今『アンネの日記』を読んでいると言ったけど、君の優生思想と言われる考え方については、いろいろ調べたりしているの? 前の手紙でも難しい本を挙げていたよね(本誌前号参照)。ええと何という本だっけ。
 植松 『アサイラム』ですね。あれは記者の方に教えてもらったのです。

 篠田 君自身はどんな本を読んでいるの。
 植松 鑑定のために一時立川署にいたのですが、その時はいろいろな本を読みました。医療関係の本とかですね。

 篠田 精神医療ということ?
 植松 延命治療とか安楽死とかについてです。

 篠田 ああ、そういうことか。君は精神鑑定で「自己愛性パーソナリティ障害」と診断されたけど、それについてはどう感じているの?
 植松 指摘されたことについては、ああそういうこともあるのかと、自分の欠点を指摘されたと思いました。ただ、それを「障害」と言われると違うと思います。

 篠田 鑑定は君の責任能力を見るために行われたわけだけれど、君は昨年2月に衆議院議長に届けた手紙で、心神喪失という診断で無罪にという話を書いていた。今回の鑑定では責任能力ありと診断されたわけだけれど、そこのところはどう考えているの?
 植松 あの手紙のその部分については、そこまで深く考えて書いたわけではないのです。