私がその問題に関わった最初のきっかけは、2004年にドイツに行った時に、3時間ほど空いたのでパンフレットに紹介されていた盲人の障害者が作った共同作業所を訪ねたことでした。私自身、作業所問題に関わっていたものですから関心があったのです。

 そしたら、そこは廃屋同然で、人もいなかったのですが、たまたま玄関のパネルにオットー・ヴァイトという人のことが書いてあった。オットー・ヴァイトは全盲だけれど、戦前、また戦時中に全盲と全聾のユダヤ人を多数支援したり救出したと書いてあったのです。

 それがずっと気になっていたので、2014年にフランクフルトでの視覚障害者の福祉機器展を観に行った時に、再度ベルリンを訪れました。そしたらEUの補助を受けたオットー・ヴァイト盲人作業所博物館という立派な施設に替わっていた。外観は変わらないんですが、内側はミニ博物館になっていました。そこでオットー・ヴァイトも大事な人物なのだけれど、T4作戦というのがあって、たくさんの障害者が虐殺されているという資料を手にしたのです。

 そこで帰国後、一緒に取材をしませんかと何人かのマスコミ関係者に声をかけたところ、興味を示してくれたのがNHKのハートネットTV班でした。NHKは大変慎重で、リサーチャーを通して調査をして、2015年の1月にようやく、やりましょうと返事が来ました。

NHK放送センター外観全景=東京都渋谷区
NHK放送センター外観全景=東京都渋谷区
 そこから共同体制を作って、同年の5月17日から26日まで第1次取材、7月26日から8月3日まで第2次取材を行い、番組を作ったんです。

 ちょうど2015年が戦後70周年ということもあり、NHKのハートネットTV班によって、オットー・ヴァイトやT4作戦を主題にEテレや総合テレビ、ラジオを合わせて全部で6種類の番組が作られました。再放送を入れると15回以上放送されました。最後は今年の1月でしたが、女優の大竹しのぶさんのナレーションで、総合テレビで1時間放送しました。今年も私は個人で6月に調査に行っています。

 実は、T4作戦とホロコーストとは本当に関係あるのかどうか、日本国内の研究者でも意見がいくつかありました。ドイツで、何人かの社会学者や歴史学者に意見を伺いました。これらの証言によると、T4作戦に携わった職員のアウシュビッツなどの収容所への異動、ガス室で使われた装置や道具が移されたなど、間違いなく関係性が深いのです。NHKの番組では、明確に関係性があるという立場をとりましたが、これに対する異議は出ていないと聞いています。

 わかってきたことは、ヒトラーが政権をとった同じ年の1933年の7月14日に断種法と言われている遺伝病子孫予防法が成立するんです。国民投票法、いわゆる一党独裁法と言われる政党新設禁止法、それに断種法の3つの法律が同じ日に生まれたんです。断種法の制定以降の流れをみると、断種法で約40万人障害者や病人が断種手術を強要され、T4作戦で20万人以上の障害者が殺された。その後、ユダヤ人虐殺へと続くわけですが、「価値なき者」を殺すという考え方や精神科医を中心とする医師が手を下したという事実は段階的であり、連続していたわけです。