そもそも「技能実習生」は外国人労働者ではない。先進国である日本が、アジア諸国から「実習生」を受け入れ、現場で働くことで技能を身に着けてもらう。通常3年、最長5年間の「実習」の終了後は帰国させ、祖国に貢献してもらう。これが技能実習生の考え方だ。

 とはいえ、今回の外国人技能実習制度の介護への適用は、明らかに「人手不足を補うための外国人労働者受け入れ」である。何しろ、介護の有効求人倍率は3倍を超えるのだ。しかも、対人サービスとしては初めての技能実習生受け入れとなる。

 介護分野における人手不足の原因は、政府が介護報酬削減を続けるため、十分な給与を支払えないことだ。解決策は、介護報酬拡大(および人件費に関する規制強化)であるにも関わらず、そこからは目をそらし、国民的な議論なしで対人サービス分野において「移民」の大々的な受け入れが始まる。わが国は、恐るべき国である。

 ちなみに、「移民と外国人労働者は違う」といった詭弁(きべん)は通用しない。国連は、出生地あるいは市民権のある国の外に12カ月以上いる人を「移民」と定義している。経済協力開発機構(OECD)の定義では「国内に1年以上滞在する外国人」が移民だ。1年以上、わが国に滞在する外国人は、全てが「移民」なのである。もちろん、介護分野に流入する技能実習生も、れっきとした移民になる。

介護施設で利用者を介助する外国人スタッフ= 2009年9月25日
介護施設で利用者を介助する外国人スタッフ=2009年9月25日 
 現在の安倍政権は、恐るべき熱心さで日本の「移民国家化」を推進していっている。安倍総理は、保守派の政治家と思われている。普通、国民や国家を重要視する「保守派」の政治家は、移民受け入れに反対するはずなのだが、とんでもない。日本の憲政史上、安倍内閣ほど移民を受け入れた政権は存在しない。2012年には68万2千人だった日本の外国人雇用者数は、2016年に108万4千人に達した。4年間で、およそ1・6倍にまで増えたのだ。

 特に、今後も人手不足が深刻化することが確実な介護分野において「移民」受け入れを決めてしまったことは、将来に重大な禍根を残す可能性が高い。

 現在は、介護サービス業が試験的に技能実習生を受け入れているだけだが、今後も「外国人労働者」の需要が拡大すると、なし崩し的に規制緩和が進み、やがては「ヒトの売り買い」で儲けるパソナをはじめとする大手派遣業者ら「政商」が市場に参入してくることになる。政商たちの手により、世界中のあらゆる地域から、「安く働く外国人労働者」を日本の介護分野に大量供給されていく。

 やがて、わが国の国民に、「介護? ああ、外国人が働く業界ね」といった認識が広まり、日本の介護サービスは移民無しでは成り立たない状況に至る。

 そこまで行くと、もはやポイントオブノーリターン(後戻りできない地点)である。われわれは日本国の二千年を超す歴史上初めて「移民国家、日本」を将来世代に引き継ぐことになってしまうのだ。

 将来の日本の教科書には、2017年11月1日の技能実習制度の介護分野への適用こそが、日本の本格的な移民国家化の始まりだったと書かれることになる。

 本当に、それでいいのだろうか?