もちろん前川氏はそんなことはしない。前川氏は課長時代から「現在ある規制はすべて望ましい」と発言している文科省の「利権の権化」だからだ。冒頭の獣医学部新設認可の答申を受けて、毎日新聞のインタビューでも「定年間近の教員が多い。(最初に入学する学生の)卒業前に先生が辞めるのなら無責任だ」「博士課程もないのに先端研究ができるわけがない」などと、新設反対の姿勢を崩していない。八田達夫大阪大学名誉教授の表現を借りれば、「筋金入りの岩盤規制の擁護者」である。

 ちなみに教員の潜在的不足も、博士課程の未設置も深刻な問題ではない。前者は海外も含めて人材を募ればいいだけだ。後者は大学院や研究所の設置を別途図ればいいだけである。要するに新設を認可しない積極的な理由にはまったく当たらない。それがまた設置審の結論でもあったのだろう。前川氏の言い分は単なる揚げ足取り以外の何物でもない。

 前川氏は天下りあっせんに関連して懲戒処分を受けた人である。天下りの問題は、天下り先が非効率的な事業を継続することで国民に損失を与えることである。その非効率性は官僚側の厳しい規制によってしばしば生じる。つまり、天下りによる弊害と規制の厳しさは同じコインの両面である。

 既存の獣医学部には、文科官僚たちが多く天下りしている。もちろん獣医学部だけではない。文科官僚が広範囲に大学などに天下りしているのは周知の事実である。大学はさまざまな規制が厳しい。その中でも獣医学部は何十年も新規参入許可どころか、その申請さえも受け付けなかった岩盤規制の牙城である。現状の規制がすべて正しいとする官僚にとって、確かに規制緩和自体が「行政をゆがめる」ものに映るのだろうが、それは単に天下りなどで大学を食い物にしてきた側の理屈である。

 ところで「前川喜平問題」だけではない。加計学園問題を追及する野党側にも「疑惑」がある。玉木雄一郎衆院議員は、加計学園問題で政府を追及していた急先鋒(せんぽう)だった。そして希望の党の共同代表に選ばれた現在も、やはり同問題で国会での審議を求めているようである。だが、玉木氏には過去に日本獣医師政治連盟から100万円の献金をうけた事実が判明している。つまり今回の規制で保護される側からお金をもらっていることになる。
2017年11月、希望の党の共同代表に選出され会見する玉木雄一郎氏(斎藤良雄撮影)
2017年11月、希望の党の共同代表に選出され会見する玉木雄一郎氏(斎藤良雄撮影)
 玉木氏の国会での加計学園問題に関する追及が、そのような政治的・金銭的なつながりを「忖度(そんたく)」したものでないことを、ぜひ国会で証明してほしい。玉木氏はこの種の「悪魔の証明」を行う義務がある。それができないときは、そろそろこのバカげた不毛の問題から、野党の党首らしい政策論争に主軸を移すべきだろう。だが、それはおそらく無理な注文だろう。