片岡亮(ジャーナリスト)

 公正取引委員会が、芸能タレントやスポーツ選手などの所属契約について、今年8月から有識者会議「人材と競争政策に関する検討会」で議論が始まり、既に3回目となる。タレントの移籍などについて独占禁止法に反する疑いが出ているためだ。芸能界では所属事務所から独立することは基本的にタブーであり、今年2月には宗教団体「幸福の科学」への出家騒動で事務所との契約を終了させた女優、清水富美加が、事務所を辞める際に「過去の月給は5万円だった」などと待遇への不満を暴露し、これに反論する事務所側と対立した。それ以降、清水が表舞台で活動する姿をみかけることはほとんどない。

 解散騒動が注目を浴びた国民的アイドルグループSMAPも、問題の本質はグループの解散ではなく、一部メンバーの「独立」だった。事務所の経営者と折り合いが悪かった辣腕マネジャーが定年退職を前に独立の動きを見せ、そこに一部のメンバーが追従しようとしたが、結果はテレビ番組で5人そろって謝罪をさせられるという異様な決着となった。会社を辞めようとしただけで不祥事を起こしたような扱いを受けたのは一般の目からすれば、明らかに異様である。

ライブイベント「ワールド・ハピネス」にゲスト出演したのん
 ほかにも最近では、人気女優だった能年玲奈が独立をしようとした途端、一部メディアに「洗脳されている」とのゴシップ記事が出て「変人」扱いされ、独立後の再出発では本名での活動ができなくなり、「のん」への改名を余儀なくされた。6月には、トップモデルの西山茉希が契約解除をめぐって所属事務所と対立していることが表面化したが、案の定、その後の露出は激減した。

 芸能界では「売り出してくれた事務所を裏切ってはいけない」という観念が固定し、タレントはいわば事務所の「所有物」のようになっている。主要な仕事先のテレビ局をはじめとする大手メディアが事務所と一体になっているから、実際に事務所とトラブルになれば、「業界から干される」ということも起こり得る。まるで恐怖政治のような世界だが、そもそも日本の芸能界は暴力団が取り仕切っていた歴史もあり、ヤクザな世界に通じる慣習がいまだはびこっているのである。

 そこを見かねて公取委が動き出したというわけだが、是正というよりまだ勉強会に過ぎず、その姿勢は決して前向きには見えない。今後の状況を見て何らかの新ルール作りに着手する可能性はあるだろうが、問われるのはその実行力だ。

 ある芸能プロのマネジャーは、タレントとの「奴隷契約」といわれるアンフェアな関係について「表向きは合法だから問題ない。弁護士を入れてガッチリそこは抑えてある」と言った。この芸能プロでは、タレントとマネジメント契約する際に書面で交わす雇用条件については2年ごとに見直し、更新することになっている。タレントに不満があれば更新時の3カ月前に契約解除の申し入れができるとされ、労働基準法で定められる3年以内の契約期間内にも違反してはいない。