一昨年、昨年とアイドルの恋愛禁止裁判が話題になりました。芸能プロダクションとタレントの間の裁判において、裁判所が芸能プロダクションとタレントとの契約は労働契約であると認定した例も少なくありません。もっとも、ほとんどの事例において対象となったのは、いわゆる有名タレントではなく、テレビの音楽番組にほとんど出演することがない、数百人規模のライブハウスでコンサートを行っている10~20代のアイドルです。
未払い賃金の支払いなどを求めて東京地裁に訴えを起こし、記者会見したアイドルグループ元メンバーの女性=2017年11月14日東京(加藤園子撮影)
未払い賃金の支払いなどを求めて東京地裁に訴えを起こし、記者会見したアイドルグループ元メンバーの女性=2017年11月14日、東京都内(加藤園子撮影)
 それに対して、独占禁止法の法規制の枠組みの対象となるのは、いわゆる大物タレント、幅広い年代で知られているタレント、国民的タレントと呼ばれるような人たちであり、芸能人、タレントという肩書で呼ばれる人たちの絶対数の中ではごく一部といえます。有名タレントになってくると、時間単位でいくらというギャラの支払いスタイルから、仕事あたりいくらというスタイルになり、その額も同年代の会社員の給与とは桁違いになっていきます。そうすると、業務の内容やギャラという視点からは、独立の事業者と評価されやすくなります。

 しかし実際は、すごく有名なタレントであっても、所属プロダクションの意向には逆らえず、明確な指揮、命令関係が認められるケースが少なくありません。若い頃、無名の頃、売れない頃から育ててもらった恩なども相まって、事務所との関係は非常に複雑な関係になってきます。

 このような有名タレントについては、所属芸能プロダクションとの契約は労働契約とは一概にいうことができず、タレントも独立の事業者と評価されうることから、独占禁止法による法規制の対象になってきます。

 まず、芸能プロダクションとタレントとの関係を1対1で考えたときには、優越的地位の濫用規制が問題となります。優越的地位の濫用とは、取引相手と比較した場合の優越的な地位を利用して、取引相手の自由で自主的な判断を妨げることをいいます。芸能プロダクションとタレントとの間で結ばれる専属マネジメント契約のほぼ全てに「専属性」が規定されており、タレントが1度契約してしまえば、所属事務所以外を通じて芸能活動を提供することは禁止されます。

 また、多くの契約書には「甲と乙は独立の当事者として」と規定があるのにもかかわらず、タレントは芸能プロダクションの指示に従わなければならないという義務規定があります。このように、所属事務所の指示を通じてしか芸能活動ができないという状況下においては、事務所が優越的地位を有しているといえるでしょう。