常識的に考えると、そもそもなぜ一介の企業である芸能プロダクションが、自社を離れたタレントに対してまで「仕事を干す」「テレビに出させない」といった実力行使ができるのか。不思議に感じるのが当然だと思います。CMに出演させるか、させないかを決めるのは、スポンサーであるはずだし、番組に出演させるか、させないかを決めるのは各テレビ局の判断であるはずです。
(iStock)
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 にもかかわらず大手芸能プロダクションが、なぜテレビ局というマスメディアに対して圧力をかけられるほど権限を持つのかというと、まさに市場を独占しているからだと考えるのが自然でしょう。

 芸能プロダクション同士が自由競争の状態にあれば、A社の芸能人がダメならB社、B社がダメならC社の芸能人、という出演者の選択肢がテレビ局にはあるはずです。しかし、A社からE社まで市場が寡占状態にある時、それらの各社が談合してカルテルを結べば、一つの芸能事務所に逆らうことはすべての出演者を失う可能性を意味することになります。

 売れっ子の大物芸能人を出演番組から引き上げさせる、という脅しをかけられると、民放各局は反抗することができません。それくらい現在の番組の視聴率は、出演者の人気に依存しています。人気のある芸能人の名前を冠した「誰々のなんとか」というタイトルの番組が、軒並み視聴率を稼いでいることからも想像がつくと思いますが、発注側のテレビ局と受注側の芸能プロダクションの力関係が逆転しているのです。
 
 テレビ局といった報道機関にまで影響力を行使するほど、芸能プロダクションの権限が肥大化するのは、決して健全なメディアの状態ではありません。

 芸能界の市場独占に行政のメスが入ることに期待するだけではなく、テレビ局自身も毅然として自らの編集権を守るべきです。そのためには芸能人の人気に全面的に依存するのではなく、自社の演出力を磨いて視聴率が稼げるよう、番組作りの体制を整える必要があると思います。

 ハリウッドでは俳優を育成しません。自分で俳優学校へ行って学び、エージェント会社を雇います。エージェント会社は仕事を探してくるブッキング業務だけを行い、マネージャーは別に雇います。日本の芸能事務所は、タレントの育成から日々のマネージメント、番組の構成・演出を手がける企画制作プロダクションまで、一社で全てを兼務する特殊な存在になっています。これが芸能界のゼネコンとして、事務所が権限を独占する一因でもあるでしょう。