2017年11月17日 17:30 公開

ジェイムズ・ギャラガー科学ヘルス担当記者

体内時計が原因で、開心術は午後の方が安全性が高まる可能性があるとする研究結果が、英医学誌ランセットにこのほど掲載された。

体内時計(または概日リズム)とは、私たちが夜眠くなる原因だ。しかしまた、体の機能に大きな変化をもたらすものでもある。

研究結果から、心臓が午前より午後の方が強くなり、手術に耐えやすくなることがうかがえる。

またこの違いは、朝は執刀医が疲れているから、というのが理由ではないという。

医師は、心臓弁置換術などの手術を行う際、心臓を止める必要がある。しかし心臓組織に流れ込む酸素量が低下するため、心臓に負担がかかる。

心臓発作や心不全、術後の死亡を含む手術併発症について医師や研究者が調べたところ、以下が明らかになった。

  • 午前中の患者298人中54人で有害事象が発生
  • 午後の患者298人中28人で有害事象が発生
  • 手術併発症のリスクは午後の患者だと約半分に
  • 午後に手術を受けた患者の場合、患者11人につき主要事象1件が回避可能

研究にかかわった一人、リール・パスツール研究所のバート・スタル教授はBBCニュースのウェブサイトに対し、「手術を受けるのを怖がってほしくない。命を救うものだから」と語った。

スタル教授はまた、病院の手術を午後だけにするのは不可能だと話した。

とは言うものの、スタル教授は「最もリスクの高い患者を特定できれば、その患者の手術を午後に割り当てられることで間違いなく恩恵を受けるし、それは妥当だろう」と加えた。

肥満と2型糖尿病は、術後に手術併発症のリスクが高まることが示されている。

心臓の調子が1日のうちに変動することはすでに知られている。

心臓まひや発作のリスクは朝一番が最も高く、一方で心肺機能は午後、ピークになる。

英医学研究会議・分子生物学研究所のジョン・オニール博士は、「科学的にはあまり驚くべきことではない。体内のほかの全ての細胞と同じように、心臓の細胞にも概日リズム(体内時計)があり、それが心臓の活動を制御している」と話した。

「私たちの循環器は、午後の中ごろから遅くにかけて最も循環が良くなる。プロのアスリートが通常、この時間帯に最も良い記録を打ち出すのはそのためだ」

今回の発見に対する説明としては、執刀医が午前中疲れている、あるいは特に執刀医が「朝型の人」の場合は、執刀医自身の体内時計が手術の腕前に影響する、なども考えられる。

しかしスタル教授は、フランスの研究者チームは生存率の違いが執刀医の腕前によるものではないと示すため、かなり多くの研究を行ったと述べた。

研究者たちは、患者の心臓組織の検体でも実験し、午後の方が心臓の脈が速いことを示した。

また検体のDNA分析の結果、287個の遺伝子で、1日のうちで動きが早くなったり遅くなったりする概日リズムを発見した。

その後、マウスに実験的薬物を投与し、遺伝子の一つの活動を変えようとしたところ、死亡リスクを減らすことに成功したという。

スタル教授は、「午前中の手術が合併症を起こしやすいという問題に対して、それを回避できるかもしれない方法を発見したと考えている」と述べた。

しかし、これを証明するにはさらなる研究が必要になる。

研究者たちはまた、概日リズムがほかの手術の生存率にも影響するかどうかを調査している。

英心臓病基金のマイク・ナプトン医師は、「英国では今や何千人もの人が開心術を受けている。この研究結果を他の病院でも再現できれば、緊急ではない心臓手術において、執刀医が手術の予定を上手く組めるようになるかもしれない」と話した。

(英語記事 Heart surgery survival chances 'better in the afternoon'