川上和久(国際医療福祉大学教授)

 「此頃都ニハヤル物 夜討 強盗 謀(にせ)綸旨」で始まる二条河原落首は、後醍醐天皇の「建武の新政」が始まって間もなく、1334年に二条河原で書かれた、時世を風刺した落首として有名だが、当時から「権威を装ったニセモノ」は横行していたようだ。

 今風に言えば、「此頃世界ではやるもの ポピュリズム フェイクニュース ファクトチェック」とでもなろうか。

 政治の世界でも「はやり言葉」がある。1990年代は、政治腐敗を断たなければならないとの思いから「政治改革」が叫ばれ、それが衆議院の選挙制度改革と分かち難く結びついて、衆議院の選挙制度を中選挙区制から小選挙区比例代表制に変えようとする勢力が「改革派」と称される一方、それに反対する勢力は「守旧派」のレッテルを貼られ、1993年の衆院選では、選挙制度改革に慎重だった自民党が過半数割れの屈辱を味わった。

 1990年代の政治のはやり言葉は「情報公開」「説明責任」「地方分権」など、四文字熟語が多かったが、21世紀に入ると横文字が踊るようになる。

 「マニフェスト」はその典型だ。2003年の流行語大賞にも選ばれた。従来の「選挙公約」と違い、期限・財源・数値目標が具体的に示された公約として、国政選挙や地方選挙でマニフェストが百花繚乱(りょうらん)となったが、このはやり言葉も、それを達成できなかったらどうなの?とか、達成できる目標ばかりを並べたらつまらない、とかさまざまな批判を浴び、あまり使われなくなった。
総選挙の街頭演説で支持を訴える安倍首相=2017年10月、山形県河北町
総選挙の街頭演説で支持を訴える安倍首相=2017年10月、山形県河北町
 2016年は、横文字政治言葉の年になった。英国の国民投票による欧州連合(EU)離脱で「ポピュリズム」が注目され、さらに、米国の大統領選挙で、一気にポピュリズム、「フェイクニュース」「ファクトチェック」の三つの横文字が氾濫した。

 この三つは、実は、底流でつながるものがある。

 民主主義がポピュリズムの側面を抱えていることは論を俟(ま)たないが、2016年の米大統領選では、共和党の大統領候補となったドナルド・トランプ氏が有権者の耳目を引こうと、メディアにニュース価値を提供するポピュリズム選挙を展開した。真偽のほどが不明な発言を連発、ネット上でも真偽不明なフェイクニュースがあふれ、共和・民主両陣営入り乱れて、世論操作に狂奔した。