トランプ氏は、共和党予備選段階の討論会ではその過激な言動がテレビやSNSで拡散したが、民間のウェブサイト「ポリティファクト」によるファクトチェックでは、トランプ氏の発言7割程度が事実と異なるとされている。

 情報発信者たる政治リーダーが、自ら真偽不明な情報を発してポピュリズムをあおり、ネット上でも真偽不明のニュースがあふれる現状の中で、権力を監視し、正確な情報を受け手に届ける責務を担ったマスメディアがファクトチェックの意義を重視したのは、自然な流れだったろう。公人による公的な場での発言には説明責任が伴う。その内容の真偽をデータに基づいて確かめていくのは、メディアの責務でもある。

 しかし、日本では、メディアが流すニュース自体を「ファクトチェック」する必要がありそうだ。

 衆院選では、希望の党の小池百合子代表が昨年7月の都知事選、今年7月の都議選で吹かせた「ポピュリズム」の風が吹くかに見えたがあえなく失速、都知事に専念するとしてあっけなく代表を辞任した。「ユリノミクス」をはじめとするカタカナ言葉も虚空に消えた。しかし、看過できないのは、政治リーダーによるフェイクニュースではなく、メディアによるフェイクニュースとも見まがうような情報操作だ。

 もともと、米国では大統領選で、特定の候補を社説で支持したりする。「エンドースメント」と言われ、19世紀から続いている伝統で、ニュース部門とは別の編集委員会が決める。2016年の大統領選では、リベラルな論調で知られるニューヨーク・タイムズが社説で民主党のヒラリー・クリントン候補を支持した。
ニューヨーク・タイムズ社
ニューヨーク・タイムズ社
 だが、日本では米国と違い、特定の政党を社説で支持するような「エンドースメント」は行われていない。「公正中立」「不偏不党」を標榜(ひょうぼう)して、新聞は記事を作成している。その意味で「日本の新聞はどれも似たような論調で、いったい有権者の判断基準になるのか」と米国の政治学者に言われたこともある。だが、今回の衆院選に関しては様相が違っていた。新聞による報道姿勢の違いがあまりに鮮明だったからだ。

 突出した報道でネット上でも問題になったのが朝日新聞だ。安倍晋三首相も朝日新聞の突出ぶりを指摘した。10月8日に行われた党首討論会で、朝日新聞を名指しして、加戸守行・前愛媛県知事の証言について「次の日には全く(報道)していない」と指摘、「胸を張って(報道)しているといえますか」「国民はよくファクトチェックをしてほしい」と、わざわざ「ファクトチェック」という言葉を使って語気を強めた。

 「全く」というのは言い過ぎた部分があったにせよ、前川氏の発言が大きく扱われ、加戸氏の発言を小さく扱っていたのは事実だ。