希望の党の失速で、見るべきところがほとんどなくなった総選挙報道。目立つのは安倍晋三首相と大メディアの“不毛な論戦”ばかりだ。

 安倍首相ほど、メディアの好き嫌いがハッキリしている総理大臣も珍しい。今回の選挙戦を通じて「嫌い」なメディアがどこか、改めてはっきりわかった。
JR池袋駅前で街頭演説する安倍晋三首相(自民党総裁)=2017年10月18日日、東京都豊島区(松本健吾撮影)
JR池袋駅前で街頭演説する安倍晋三首相(自民党総裁)=2017年10月18日日、東京都豊島区(松本健吾撮影)
 日本記者クラブの党首討論会(8日)で、朝日新聞の論説委員から加計疑惑について問われると、“朝日の報道こそおかしい”と色をなして反論した。

「朝日新聞は先ほど申し上げた八田(達夫・国家戦略特区WG座長)さんの(加計の特区決定に一点の曇りもない、との発言の)報道もしておられない」

 対する朝日は論説委員が「(報道)しています」と言い返すだけでなく、わざわざ翌朝の紙面で〈今年3月下旬以降に10回以上、八田氏の発言や内閣府のホームページで公表された見解などを掲載〉とやり返した。

 もちろん、総理大臣の政策論を聞き、選挙記事を読んで投票先を決めたいと考える有権者にとっては、不毛な応酬でしかない。

『NEWS23』(TBS系)での諍いもそうだ。きっかけは解散表明当日、同番組に出演した安倍首相が、“解散の大義”を延々と語っている最中に突然、「2人でモリカケ!」という音声が流れた一件だった。

「流れてしまったのは森友・加計問題に話題を移すよう指示する番組ディレクターの声で、キャスターの星浩氏が外していたイヤホンから音が漏れ、それをマイクが拾った。初歩的なミスだが、安倍首相は“敵失”がよほど面白かったのか、公示前日に再び同番組に出演すると、話題が森友・加計に及んだ時、わざわざ星氏に『イヤホンは大丈夫ですか』と当てこすってみせた」(TBS関係者)

 政権に批判的なメディアには“口撃”を繰り返しているわけだ。田島泰彦・上智大文学部新聞学科教授はこう嘆く。

「権力者がメディアに監視され、批判的検証の対象になるのは当然のこと。安倍首相の対応はあまりに子供じみている。また、メディアの側も“報じたかどうか”といったレベルに合わせるのではなく、疑惑の本質を伝える報道に絞るのがあるべき姿ではないか」

 与野党間のやり取りも、首相とメディアの諍いも、まるで「子供のケンカ」である。

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