著者 KEIKO


 サンフランシスコが反日拠点だといったコメントを耳にした。こういった偏った不用意な発言は私たちを戦争へと近づけていくのではないだろうか。
 
 斬新な解説をするコメンテーターの言うことは時にはワクワクする。だが、政治的にその人がどういうスタンスをとっていて、その弁明によって何を目指しているのかを確認する必要も聞き手やプロデューサー側には求められる。「この人は詳しそう」というおぼろげな感覚だけで一つの意見を鵜呑みにしないという手続きは情報が交錯する時代には誰もが心得て置かなければいけないことだと思う。
 
 過去の大きな戦争の流れをたどっていけば、必ずどこかに個人レベルでの衝突があり、それを感情的に煽る力と無言のまま支援する力が加わって大きな論争に発展しているものだ。
 
 ましてや一個人のコメントが瞬時に何万人、何十万人、時には何百万人へと配信され、しかもその言動が記録され、好き勝手に切り取られて簡単に独り歩きしていってしまうような時代。一つ一つの発信に発信者自身もそのパワーと責任を感じ取り、慎重に選んだ言霊(ことだま)を乗せて欲しい。他人が発信した情報をシェアする人もそうだ。
 
 あらゆることに意識を張り巡らせた解説でない限りそれはニュース報道ではなく、感情的な主観による人寄せの詭弁となる危険性がある。米大統領選を大きく動かしたといわれるいわゆるフェイクニュースは少人数の偏った目標を掲げた者たちによって発信されたが、事実確認をしないままシェア拡散する大衆の無意識の協力により大きな効果をもつこととなった。フェイクニュースの発信者はそれが簡単に可能であることを先読みしていたのだ。
 
 本来なら世界中の人と人がつながり合い平和で楽しい世界を作るために情報交換をしていく土台であるべきインターネットが人を傷つけたり、みんなで集まっていじめたり、はたまた自殺幇助(ほうじょ)の温床となってしまうのはなんとも悲しいことだ。

 サンフランシスコはカリフォルニア州をはじめとするアメリカのどの州にも先駆けて同性愛者同士の婚姻を許可した地方都市(郡でもある)だ。性や人種を超えて人権を尊重するということにかけては第一線で理想の旗を掲げている街。
 
 有色人種も多く、アジア人だけではなく世界中からの外国人が多く住んでいるいわゆるメルティングポット(人種のるつぼ)だ。世界中の住んでみたい街のトップに必ずランキングされる理由は決して外観の美しさや、まるで空調で整えたかのような湿度と温度がほぼ一年中楽しめる気候だという事実以外に、メルティンポットだからこそのユートピアが見え隠れする街だからだ。
 
 人口の84・5%である34・5万人が民主党に登録しており(選挙は登録制)、ジョージ・W・ブッシュ大統領はその8年間の就任期間に一歩も足を踏み入れなかったというくらい、民主党の勢力が強い都市であることは有名である。
ジョージ・W・ブッシュ元大統領
ジョージ・W・ブッシュ元大統領
 日本では民主党のオバマ大統領がブッシュ大統領ほどの人気がなかったと知ってショックを受けるアメリカ人は少なくないだろう。日本政府とアメリカ共和党との強いつながりの理由はおそらく「保守」対「リベラル」のくくりの意識が導き出している中身の釣り合わない国家間友情なのだろう。保守だから自民党はアメリカの共和党と仲良くなる、逆にアメリカ側も民主党は日本の自民党とは距離を置こうという判断なのかもしれない。