織田重明 (ジャーナリスト)

 週刊文春が絶好調だと言われる。

 甘利経済再生担当大臣やタレントのベッキー、さらには“イクメン議員”だったはずの宮崎謙介衆議院議員と、次々と文春のターゲットにされ、撃沈していった。今年に入ってから、完売はすでに3回。これより前に文春が完売したのは3年も前というが、出版不況にあえぐ雑誌業界にあって3回立て続けの完売は驚異的なことである。
辞任を発表し、悔しそうな表情を見せる甘利明・経済再生担当相(当時)=2016年1月28日、東京都(斎藤良雄撮影)
辞任を発表し、悔しそうな表情を見せる甘利明・経済再生担当相(当時)=2016年1月28日、東京都(斎藤良雄撮影)
 民放テレビ各局の情報番組では、「週刊文春によれば……」と文春の記事をそのまま流している。自社でウラも取らずに文春の記事を放送することについてメディアとしていかがなものかと批判するむきもあるが、どだい民放のマンパワーでは独自のウラ取りなんてとても無理である。

 民放各局にも報道局という部署があって記者がいるが、これは正午前や夕方、さらに晩のニュース番組のための取材や原稿書きをするためにいるのであって、午前中や午後の情報番組のための人員ではない。文春が書いてくれ、ある程度、社会的に認知された記事であれば、一も二もなく飛びついてしまうのである。

 文春側もしたたかなもので、最近ではテレビ各社に対して、「週刊文春によると」とのクレジットをしっかりつけるよう求めるだけでなく、画像や記事の使用料を取るようになったという。少なくない経費をかけて取材をしたわけだから、テレビ各局にタダ取りされてはかなわないということだろう。

 ネットには「なぜ文春はスクープを連発するのか」という類いの記事が多く掲載されるようになった。週刊誌の記者による取材や制作過程に関心が高くなっていると思うと、たいへん喜ばしいことだが、一般に広がっているイメージのなかには誤りも多いので、この機会に指摘してみたい。

①多額の取材謝礼を支払っている
 のっけからカネの話で恐縮だが、この誤解に対してはきちんと言っておきたい。文春がなぜ強いのかと書いたネット記事のなかにこう書いているものがあったからだ。

 文春にかぎらず週刊誌はネタ元に対して多額の謝礼を支払っているとのイメージが世間では強いようだ。なかでも文春は他社よりも高額であると。だから、多くのネタが集まってくるのだという理屈だ。

 私が知るかぎり、かつてある大手出版社の某週刊誌が大物芸能人と暴力団幹部が一緒に写った写真を入手するのに、百万円を超える謝礼を払ったことがある。担当編集者にオリジナルの写真を見せてもらいながらその額を教えてもらった時に、驚いた記憶がある。

 ただし、これは今ではかなりレアなケースだと思う。第一、ネタをカネで買ってくれと言ってくるような人物は信用ならないことが多い。カネ欲しさに話をでっち上げるようなことだってするからだ。

 かつてインタビューを受けてくれた相手から多額の報酬を請求されたことがあったが、きっぱり断ったことがある。そんな額、どうやっても経理の担当者が認めるわけがないし、そもそもインタビューが掲載されることであなたが主張したいことが一般読者にも伝わることになり、あなたにとってもプラスの影響が出るはずだ、そう説明した。相手も最後は納得してくれた(と思う)。繰り返しになるが、多額の取材謝礼を支払うなんてあり得ない。多くは我々記者が足で稼いだ成果だ。