2017年12月06日 15:52 公開

米ホワイトハウスの高官は5日、ドナルド・トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都として一方的に承認する一方で、現在テルアビブにある米国大使館はすぐには移転させないと明らかにした。

トランプ大統領は6日にこの問題について演説する予定。

アラブ諸国の指導者らは米国大使館をエルサレムに移さないよう警告しており、サウジアラビアのサルマン国王は、イスラム教徒が移転を「目に余る挑発」と受け止めるだろうと語った。

エルサレムはイスラエルとパレスチナ双方にとって、宗教的な聖地。その位置付けをめぐり、双方が激しく対立してきた。イスラエルはエルサレム全体を首都と主張している一方で、パレスチナは東エルサレムを将来の独立国家の首都にする考えだ。

米国がイスラエルの立場を認めた場合、1948年のイスラエル建国以来、エルサレムをイスラエルの首都として承認する最初の国になる。

対立背景

エルサレム問題は、パレスチナとイスラエルとの間の対立の核心にかかわっている。米国はイスラエルを支持するが、アラブ諸国をはじめとするイスラム世界全体は、パレスチナの立場を支持してきた。

エルサレムにはユダヤ教、イスラム教、キリスト教それぞれの聖地があり、聖地の多くは特に東エルサレムに集中している。

イスラエルは1967年の第3次中東戦争以来、それまでヨルダンが統治していた東エルサレムを占領し、エルサレム全体を自国の首都だと主張している。

一方のパレスチナは、樹立を目指す新国家の首都は東エルサレムになると主張。1993年にイスラエルとパレスチナの間に結ばれた「オスロ合意」では、和平協議において東エルサレムの位置付けを話し合うことになっていた。

国際社会はエルサレムは自分たちの首都だというイスラエルの主張を承認せず、これまですべての国が大使館をテルアビブに置いてきた

1967年以降、イスラエルは東エルサレムに十数のユダヤ人入植地を建設し、現在約20万人が居住している。これらの入植地は国際法違法と指摘されているが、イスラエルは反論している。

米国がエルサレムをイスラエルの首都と認めれば、東エルサレムの入植地の正当性を主張するイスラエルの立場を後押しすることにもつながる。

米国の説明

トランプ政権関係者は、エルサレムをイスラエルの首都と承認するのは、米政府による「現実追認」だと話した。しかし、市内の具体的な区割りについては、パレスチナの最終地位協議で決めるものだという姿勢を示した。

トランプ大統領は国務省に大使館のエルサレム移転手続き開始を指示する見通しだが、完了までには数年かかる可能性がある。

昨年の大統領選でトランプ氏は、親イスラエル支持者に対し大使館の移転を約束していた。

米政府関係者によると、トランプ氏は通常手続きとして、エルサレムの公館が新しく完成するまで大使館移転を延期する指令にも署名する。

トランプ氏は正式な発表に先立ち、中東諸国の首脳数人と電話会談をして大使館移転の方針を伝えた。

各国の反応

サウジアラビアのサルマン国王はトランプ氏に対し、エルサレムの首都承認と大使館移転は「世界中のムスリム(イスラム教徒)に対するあからさまな挑発になる」と述べた。

ホワイトハウスによると、トランプ氏は5日にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とも電話会談した。

このほか各国首脳の反応は以下の通り。

  • パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は、「このような決定が和平プロセスや、地域ひいては世界全体の平和、安全、安定に与える危険な結果」について警告した
  • ヨルダンのアブドラ国王は、米国の決定が「和平プロセスを再開しようとする努力を損ない」、イスラム教徒を挑発すると語った
  • エジプトのアブドゥル・ファタ・シシ大統領は、トランプ氏に対し「地域の状況を複雑にしないよう」求めた

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、米国がエルサレムを首都と認めるならば、トルコはイスラエルと国交断絶するかもしれないと警告した。

ガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏は、首都承認と大使館移転は「あらゆる面で一線を越えた行為」になると語った。

フランスや欧州連合、アラブ連盟も懸念を表明した。

イスラエルのイスラエル・カッツ情報活動相は、軍が運営するラジオ局アーミー・ラジオに対し、イスラエルが「暴力の発生を含むあらゆる可能性への準備をしている」と述べた。

抗議デモなどが予想されるなか、米政府職員と家族は安全上の理由から、エルサレム旧市街やヨルダン川西岸への個人的訪問を禁止された。

(英語記事 US to recognise Jerusalem as Israel's capital in world first