安田理央(ライター、アダルトメディア研究家)

 現在、アダルトメディア業界を支えているのは中高年である。特にアダルト雑誌読者の高年齢化は著しく、メインの読者層は50代である。官能小説誌などの文字中心の雑誌となると、さらに高くなり60代、70代だ。現在唯一の月刊官能小説誌である「特選小説」(綜合図書)の表紙には「小説の文字が大きくて読みやすい!」という文字が躍っている。

 アダルト雑誌の中心読者が中高年だと言うと驚く人は多い。エロ本は血気盛んな若者が読むものというイメージが強いからだろう。

 読者の高年齢化が目立つようになったのは、90年代後半からだ。やはり大きいのはインターネットと携帯電話の普及による影響だ。若い層は、ごっそりとそちらに取られてしまった。

 既にアダルト雑誌は、事実上滅びていると言ってもいいだろう。かつてエロ本を数多く発行していた出版社のほとんどがエロ本から手を引いている。活動を停止してしまった出版社も多い。
(iStock)
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 それでも、まだ書店やコンビニにはエロ本が並んでいると思うだろうが、そこにあるのはアダルトビデオ(AV)メーカーから素材を借りてつなぎ合わせただけのDVD付きムックばかりで、発行しているのは新興の出版社である。

 そして今、アダルト雑誌を買い支えているのは、高齢者で、しかもネットができないという層なのだ。誌面でネットの記事を書くと「そういうわからないものを載せるのはやめてくれ」という反応が多いという。悪い言い方をすれば、もはやエロ本は情報弱者によって生き永らえているのだ。

 それもそうだろう。少しの知識があれば、ネットやスマホからいくらでも無料のアダルトコンテンツが入手できるのだから。しかも、雑誌で見るよりも過激で濃厚なものばかりだ。「やっぱり紙じゃないと」というフェティッシュなポリシーで雑誌を買い続けているような読者は、ほとんどいないのが現実だ。もっとも雑誌読者の高年齢化はアダルトジャンルに限ったことではない。全ての雑誌は読者の高年齢化に悩んでいるのが現状だ。

 それでは、30年前からアダルトメディアの王者の地位を守り続けているAVはどうだろうか。

 こちらもまたユーザーの高年齢化が進んでいる。雑誌に比べるといくぶん若いが、それでもメインの年齢層は40代後半であり、徐々に50代に近づきつつある。AVショップやAV女優のイベントに行っても、目につくのは中年客ばかりだ。

 若い世代がAVを見ないというわけではない。むしろAVを見たことがないという若者は男女共にほとんどいないだろう。彼らに話を聞いてみると、AVは携帯電話やスマホで見るものという意識が強い。そして無料で見るものなのだ。違法にアップロードされた動画共有サイトで見たり、あるいは通販サイトのサンプル動画で満足していたりする。