塚越健司 (拓殖大学非常勤講師)

 前回は中国のシェアリングサービスを論じることで、制度設計が人々の行動習慣にどのような影響をもたらし得るかを論じた。本連載でも最近中国について論じる機会が増えてきたが、それほどまでに特殊なIT事情を有する中国は、やはり注目に値する。

 とはいえ中国は、世界をつなげてひとつにする「世界共通のインターネット」から離脱しようという意図がみえる。またグーグル検索においてもこの「世界共通」は複雑な問題を抱えている。

 そもそもインターネットは当初こそ軍事利用的な発想で生まれたが、一般的な普及にあっては世界中の人々がひとつにつながることで、対立から融和への道を示そうという思想的な側面が存在していた。この思想は現在に至り、多くの問題を抱えている。そこで今回は、インターネットが1つであることの困難やその問題について考察したい。

 中国の積極的な「世界共通のインターネット」から離脱せんとする動きが問題となっている。以前本連載でも述べた通り、中国は海外のIT製品を締め出し、国内だけでまわるインターネット経済圏を構築しようとしている。また2017年6月に施行した「サイバーセキュリティ法」は、海外企業が中国国内で業務を行う際に当局の求めに応じた協力が要請されており(具体的な指定がないが故に、範囲はいくらでも拡張可能だ)、場合によっては個人情報の提出などが考えられる。このように海外企業への一層の取り締まりの一方、国内の統制も強化されている。

 よく知られている通り、独裁国家や抑圧的な国家は特定の情報などへのアクセスが禁止されたり、時に国民の通信回線を遮断することもある。中国はインターネットに関する有名な検閲システムがあり(いわゆる「Great Firewall」)、TwitterやFacebookといったSNSをはじめ、Googleのサービスや「ニューヨーク・タイムズ」といったメディアへのアクセスも不可能なばかりか、天安門事件などについては検索に表示されず、政府批判の発言は削除されてきた。
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 中国は最近になって、VPNを2018年2月1日までに大手キャリアに禁止させる予定であると報道されている。VPNとは「Virtual Private Network(仮想プライベートネットワーク)」を意味するもの。技術的な詳細を省きごく簡単に概要だけ説明すれば、セキュリティレベルを上げることで他者からの攻撃を阻止するとともに、設定によっては中国にいながら他国からアクセスしたようにみせかけることを可能とする技術だ。これにより、中国の人々も欧米からアクセスしたようにみせかけることで、欧米のSNSなどを利用することが可能であった。