さらに決議では「この(イスラエルの)行動は中東での包括的で、公正で、恒久的な和平の達成に対する深刻な障害となる」としている。決議ではすべての加盟国に対して、「安保理の決定の受け入れ」を求め、さらに「エルサレムに外交使節を置く解明国に聖地からの撤退」を求めた。

 この安保理決議を受けて、米国や日本を含むほとんどの国連加盟国はイスラエルが首都宣言をしているエルサレムではなく、テルアビブに大使館を置いてきたのである。トランプ大統領がイスラエルによる東西エルサレムの首都化を「現実」として認定すると発表しても、それを「法的効果はなく、無効」という安保理による決定が変わるわけではない。イスラエルによる東エルサレムの占領から、50年が経過したが、それが「武力による領土の獲得」だという「事実」は変わるわけではなく、トランプ大統領の発表は安保理決議に違反し、米国大使館がエルサレムに移転されれば、それも決議違反ということになる。

 安保理決議がイスラエルによる統一エルサレムの首都宣言を「恒久的な和平の達成に対する深刻な障害」と認定したことは、イスラエルが東エルサレムを占領した1967年の第3次中東戦争後に採択された安保理決議242号とつながってくる。

 それは中東和平の原則を定めるもので、「国連憲章の原則は公正で恒久的な中東での平和の確立を求めており、次の二つの原則の実施が含まれるべきだ」としている。その二つの原則とは、①イスラエル軍が今般の紛争によって占領した領土からの撤退、②すべての要求または交戦状態を終わらせ、地域のすべての国家の主権と領土の一体性を認め、平和のうちに生存する権利を尊重する。

 決議242号は、イスラエルに占領地からの撤退を求め、代わりにアラブ諸国にイスラエルの承認と生存権を認めることとを求めていることから、「土地と平和の交換」として、現在まで米国が仲介者を自任する中東和平の原則として認識されている。占領から13年たっていようとも、占領地の東エルサレムを含む「統一エルサレム」を首都と宣言することが、安保理決議242号が提起する中東和平の原則に反することは明らかである。

会談を前に記念撮影に応じるクシュナー米大統領上級顧問(左)と
河野太郎外相=2017年11月5日、東京都港区
記念撮影するクシュナー米大統領上級顧問(左)
と 河野太郎外相=2017年11月5日、東京都港区
 トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都として認定したことは、「武力による領土の獲得」を認めないとする前提に反するものであり、それを認めれば、決議242号が提起する「土地と平和の交換」の原則は困難にする。トランプ氏が「和平の実現」を語るのは全く矛盾する話なのである。

 トランプ大統領の決定に欧州各国も批判し、懸念を表明しているのは、その立場がこれまでの中東和平の枠組みと矛盾し、それを否定するものだからである。その中で、河野太郎外相が「(トランプ氏が)恒久的な和平合意の促進への強固なコミットメントと二国家解決への支持を表明したことは評価する」と語ったのは、全く筋違いの話である。

 トランプ大統領はエルサレムがイスラエルの首都だと認定することを「現実を認めることにすぎない」とし、その上で、「エルサレムでのイスラエルの主権が及ぶ範囲や論争がある境界など、和平の最終地位に関することにはいかなる立場もとらない。それらの問題は当事者にゆだねられる」と語る。そのことは、イスラエルが武力によって東エルサレムにユダヤ人入植地を建設し、さらにエルサレムの境界をはるかに超えてヨルダン川西岸に建設した大規模入植地をも「現実」として認めることにつながるだろう。