イスラエルはこの50年間、国連安保理が「紛争によって取得した領土」と認定している東エルサレムとヨルダン岸西岸でユダヤ人入植地を建設し、東エルサレムで20万人、ヨルダン川西岸に40万人の入植者が住んでいる。占領から50年が過ぎ、多くのイスラエル人は東エルサレムの入植地はもちろん、エルサレムの周辺にあるユダヤ人入植地が、占領地であることを忘れている状態である。

 さらにイスラエルは今世紀に入って、ヨルダン川西岸とイスラエル本土の間に分離壁を建設した。ただし、ヨルダン川西岸にあるユダヤ人入植地は分離壁の内側に入れられ、東エルサレムにあるパレスチナ人が住んでいる地域は分離壁の外に置かれて、エルサレムから切り離され、パレスチナ人をエルサレムから排除しようとしている場所も多い。

 このようにイスラエルが武力にものを言わせて、次々と「エルサレムの現実」を変えていることが、「土地と和平の交換」の原則に基づく和平の実現をますます困難にしている。その上で、トランプ大統領が決議478号に反してエルサレムをイスラエルの「永遠の首都」と宣言したイスラエル基本法を認めて、米国大使館をエルサレムへの移転を命じたことは、力による違法を是認し、和平の終わりを意味するのは自明のことである。

イスラエル治安部隊の催涙ガスなどの被害を受け、運ばれるパレスチナ人
=2017年12月9日、パレスチナ自治区ベツレヘム
イスラエル治安部隊の催涙ガスなどの被害を受け、運ばれるパレスチナ人 =2017年12月9日、パレスチナ自治区ベツレヘム
 エルサレムをめぐる今回のトランプ大統領の決定は、中東に何をもたらすだろうか。

 パレスチナ側の反発による第3次インティファーダ(民衆蜂起)の懸念を危惧する声が盛んに出ている。しかし、2002年3月にイスラエルによるヨルダン川西岸への大規模侵攻の時、新聞社のエルサレム特派員として現地にいた私の経験から考えれば、パレスチナ人による第3次インティファーダが起こるとは考えにくい。第2次インティファーダでは、イスラエルの圧倒的な軍事力に対抗するために、ファタハとハマスの武装部門は、イスラエルの民衆を標的にするというテロ戦術をとったが、その結果、イスラエルの大規模な武力行使を許し、パレスチナ社会に決定的な敗北と挫折を残した。

 ヨルダン川西岸や東エルサレムの入植者や兵士に対する単発的なテロは起こるかもしれないが、第2次インティファーダのようにファタハとハマスの武装部門が前面にでてテロ戦術をとるとは考えにくい。さらに民衆の怒りが爆発するだけでは「民衆蜂起」にはならない。かといって、1887年12月に始まった第1次インティファーダのような住民による不服従運動のような市民中心の組織的な動きも、現在のファタハとハマスによるそれぞれの強権支配の元で起こるとは考えにくい。